木原健太郎さんインタビュー

 

バーナビー市と、北海道釧路市が姉妹都市提携して50年。それを記念して、ジャズピアニストの木原健太郎さんが、7月10日にマイケル・J・フォックス劇場でコンサートを開く。バーナビー市と国際交流基金が主催し、在バンクーバー日本国総領事館など8団体・企業が共催する。コンサートを前に、木原健太郎さんに話を聞いた。

  

ジャズピアニストの木原健太郎さん

   

バーナビー市・釧路市姉妹都市提携50周年記念コンサートを行うことになったいきさつは?

 今年2月に、能楽師の山井綱雄さんと私の、能舞xジャズピアノユニット『縁〜enishi〜』の公演をバンクーバーでやらせていただきました。その時に、私の故郷、釧路市とバーナビー市が姉妹都市だということを(在バンクーバー日本国総領事館の)岡田総領事からお聞きして、偶然ではない何かご縁を感じました。ちょうど私に、釧路市観光大使依頼のお話がきていたタイミングでしたので、そのことを岡田総領事にお話しして、このたびの公演の機会をいただきました。バーナビーを訪れるのは初めてですので、とても楽しみです。

今までに何枚のCDアルバムを出していますか? 思い出深いものはありますか?

 ミニアルバムなどを含めると、12〜13枚ほどリリースしていると思います。その中では、やはり1枚目の『Listen to your “Heart song”』ですね。それまでテクニックバリバリのジャズをやってきた私が、テクニックより大切なものを探すために、180度方向を変えて、全てを削ぎ落としてシンプルなメロディで、誰もがその人なりの気持ちで歌詞をのせて歌えるような、そんな世界を目指して作ったアルバムです。

 そこからまた少しずつ楽器とセッションしたり、自分なりのジャズやニューエイジ音楽を追求してきました。そうするうちに、歌手のスーザン・オズボーンさんとデュオをやらせていただいたり、さまざまな方たちとコラボレーションさせていただくようになりました。1枚目の時に、削ぎ落とすコンセプトがなかったら、今の音楽活動はないと思います。

現在の活動について教えてください。

 音楽活動は多岐にわたります。作曲や編曲もしますが、メインは演奏活動です。自分のライブを各地で開くときには、ピアノソロや弾き歌いの他に、4管の管楽器とピアノ、ベース、ドラムスの7人編成の『木原健太郎withベリーメリーオーケストラ』というバンドで、ポップジャズを演奏したりもします。作編曲は、ゴスペラーズなどJ-Popなどの歌ももちろんですが、アニメーションの音楽を私風のジャズテイストで作ったり、演劇の舞台の音楽を担当させていただいたりもします。昨年暮れには、ディズニー映画『アナと雪の女王』の日本版の声で大活躍の神田沙也加さんとのデュオで、『アナ雪メドレー』をミュージックステーションの年末スペシャルで披露し、本当にたくさんの方から好評をいただきました。

能楽師の山井綱雄さんとの能と ピアノのコラボレーションについて。

 能は日本人にとっても、ちょっと難しく敷居の高いものです。そんな能とのコラボレーションでは、難しい言葉が表す情景をピアノの旋律で表現してみたらどうだろう?と、いつも試行錯誤の繰り返しです。2月のバンクーバー公演では、会場の皆さんにスタンディングオベーションまでいただき、海外の皆さんにお伝えする意義を改めて感じた次第です。このコラボはライフワークのように続けていきたいと思っています。またいつか、バンクーバーの皆さんにも、進化した『縁〜enishi〜』を観ていただく機会があることを願っています。

今回のコンサートの曲の 構成について教えてください。

 私が自分のライブでやっている曲を中心に選びました。オリジナル曲は、どなたの耳にもスーッと入っていけるようなシンプルなメロディと、時折出てくる私のスキャットボイスが特徴です。難しい曲はほとんどやらないので、皆さんそれぞれのココロに寄り添えるような演奏をしたいです。カバー曲は、私のアルバムにも収録されている、『にほんのうた』である唱歌、童謡など、和のココロを大切にした、なおかつ、木原健太郎らしさあふれるアレンジでお届けします。

 また、バーナビー出身のマイケル・ブーブレさんの『Home』を、この日のためにアレンジして演奏します。バーナビー、釧路、それぞれの故郷(Home)を愛する気持ちがあってこそ、お互いの都市を思うこともできる。そんな気持ちの姉妹都市交流が、今後も続いていくことを願って演奏します。『Home』は、バーナビーの街の風景の写真スライドをスクリーンに映しながらの演奏です。

 北海道と釧路をイメージした私のオリジナル曲『All my tomorrows』も演奏します。北海道は開拓されてから、先人たちのたゆまぬ努力があってこそ今日があります。昔からの、日々の道産子たちの営み、北海道の大自然、そこに生まれ、今日も生かされている自分たち…北海道や釧路へのリスペクトを込めたこの曲を、ぜひバーナビーの人たちにも聴いてほしいです。この曲は、中島有二郎さんのギター、岡田総領事の電子サックスとのアンサンブルでお届けします。

中島有二郎さんのギターとの共演について。

 私のピアノソロ、弾き歌いでステージをスタートして、後半にゲストとして中島さんと数曲セッションさせていただきます。中島さんとは、2月のバンクーバー公演の時に、初めてお会いしてお話させていただいただけなんです!でも、お互い話しているうちに、『一緒にやったら何か面白そうだな』と、感じていたと思います。セッションやコラボレーションは、化学反応が面白いものです。中島さんとどんな景色が描けるか、今から楽しみにしています。

今回のコンサートで観客に伝えたい メッセージがあればお願いします。

 姉妹都市交流50周年のお祝いができるのも、良好な関係を築く努力をされてきた、両市の皆さんのたゆまぬコミュニケーションがあってのことです。グローバル化が進む中、51周年より先も、お互いの違いを認め合い、リスペクトの心を忘れずに関係を築いていくうえで、私のコンサートを通して、皆さんの気持ちが1つになるような、友情を確かめあえるような、そんな公演にぜひしたいです。

最後に、バンクーバー新報読者への メッセージをお願いします。

 2月にバンクーバーで公演をさせて頂いて半年も経たずに、またこうしてバーナビーでの記念コンサートでお会いできますことを、心から楽しみにしております!

 

能楽師の山井綱雄さんによる能舞と木原健太郎さんのピアノのコラボレーションは、今年2月バンクーバーで公演を行った(Photo by Miyuki Nakamura)

 

バーナビー市・釧路市姉妹都市提携50周年記念コンサート

ジャズピアニスト:木原健太郎

ゲストギタリスト:中島有二郎

7月10日(金) 午後7時半開演(午後7時開場)

Michael J. Fox Theatre

7373 MacPherson Ave, Burnaby

チケット 1人$22

チケット購入:Shadbolt Centre for the Arts

6450 Deer Lake Ave, Burnaby

www.shadboltcentre.com

 

演奏活動、作編曲、一般の方向けピアノのレッスンなど、さまざまな活動を通して音楽の楽しさを伝え続けている

(取材 大島多紀子) 


 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。