ハウサウンドやジョージア海峡周辺は、北米大陸の最南端にあるフィヨルド地形だ


アクセス

サンシャイン・コーストは、ジョージア海峡とハウサウンドの間に広がるエリア。海岸のすぐ近くまで沿岸部山岳地帯の深い山並みが迫っているので、陸路ではアクセスすることができない。バンクーバーからは、ホーシュー・ベイから発着するフェリーに乗り、約40分でサンシャインコーストの南端の町、ギブソンに着く。この短い船旅が気分をすっかり「旅モード」に変えてくれる。本土なのに、離島の旅情さえ感じられる。  サンシャイン・コーストは夏のリゾート地として人気があるが、旅行客が少なくなる冬こそゆったりと旅してみたい。車でのドライブがもちろん便利だが、サンシャイン・コースト・ハイウエー沿いに主なコミュニティーを結んで走る公共バス(www.transitbc.com/regions/sun)もある。

 

まずは情報収集から

ギブソンはサンシャイン・コーストの入り口。1972年から1990年まで続いた人気TVドラマ「ビーチコーマース」の舞台として知られた町だ。一泊旅行なら、ここに泊まってのんびりするのもいい。可愛らしい街の散策や海辺のウォーキングルートなど、十分に二日間を楽しむことができる。中でも、ぜひ訪れたいのがサンシャインコースト博物館(http://www.sunshinecoastmuseum.ca/)。小さな博物館だが、サンシャイン・コーストの豊かな歴史を物語る品や写真などがわかりやすく展示されている。  サンシャイン・コーストの歴史は、数千年前まで遡ることができる。ヨーロッパ人が初めて現在のカナダの西海岸を訪れた1790年代には、このエリアには2万人近くの沿岸部セイリッシュ族の人々が住んでいたと考えられている。豊かな森と鮭などの食料に恵まれて、カヌーを作る技術や優れた工芸品を生み出す文化を育んでいた。ヨーロッパ人の定着が始まったのは1880年代から。最初は木材の伐採が中心で漁業なども徐々に発展してきが、20世紀に入ると観光地としても注目されるようになる。ユニオン汽船が就航するようになると、ハウサウンドからサンシャイン・コーストへの旅は、フィヨルドの雄大な眺めを売りにヨーロッパにまで知られるようになった。  「サンシャイン・コースト」という名前は、1914年にロバート・クリークをリゾート地として売り出そうとしたハリー・ロバートが「サンシャイン・ベルト」という言葉を宣伝に使ったのが始まり。その後、1951年にブラック・ホール・フェリーが就航すると、「サンシャイン・コースト」というキャッチフレーズを宣伝に使うようになって定着した。

 

ユニオン・スティームシップ社がサンシャイン・コースト周辺の宣伝に使った
パンフレット

   

 

旅のスタートはサンシャインコースト
博物館から

 

 

目印は「目」マーク

サンシャイン・コーストには、穏やかで美しい自然を愛するアーティストや工芸家がたくさん住んでいる。冬の旅なら、森の中の小さなスタジオや海辺のアートギャラリーを巡ってのんりびとアートに親しむ旅がおすすめだ。ローカルアーティストの作品を扱っているクラフトショップやアートギャラリーの入り口には、紫の地に「目」をデザインした旗が掲げられている。なかでも織物やパッチワークなどの興味がある人なら見逃せないのが、マディーナ・パークの北にあるファイバー・ワークス(www.fibreworksgallery.com)。モンゴルの遊牧民が使っているゲルと呼ばれるテントを使ったユニークな店だ。ワークショップの教室や工芸家のアートギャラリー棟も並んでいる。  ショッピングと並んで旅の大切な要素は食事。地元の海でとれた旬の魚介類を使ったシーフードから、小さなベーカリーの焼きたてパンまで、サンシャイン・コーストでは心がはずむ美味しさに出会える。レストランの多くは海辺に面しているので、穏やかな水面や温帯雨林の深い緑を眺めながら、熱々のブイヤベースやチャウダーを食べるのは冬ならではの楽しさ。朝食なら、スモークドサーモンのベネディクトをぜひ試してみたい。

 

オリジナルの工芸品やローカルアーティストのギャラリーを探すなら「目」の旗が目印

   

 

ファイバーワークスでは、染色や織物のワークショップも行われている

 

 

地元でとれた新鮮な素材を生かしたブイヤベース。熱々がおいしい

 

 

贅沢なホテルでスパ三昧

サンシャイン・コーストには、家族連れが気軽に利用できるモーテルも多いが、隠れ家宿的な贅沢なホテルも点在している。代表的なのは、海を見下ろす崖にゴージャスな個別テントをしつらえたロックウォーター・シークレットコーブ・リゾート(www.rockwatersecretcoveresort.com )や、設備の整ったスパを併設したペインティッド・ボート・リゾート(www.paintedboat.com )だが、プロポーズや特別な記念日を祝うなら、静かな入り江に面した広々としたパティオや、暖炉のあるコージーな客室と気配りのあるサービスで常連の多い、ウエストコースト・ウィルダネス・ロッジ(www.wcwl.com )がベスト。このロッジは、ゾーティアックを使ったボートツアーも催行している。ロッジの周辺は、フィヨルドの複雑な入り江が続き、特に「サンシャインコーストの宝石」と讃えられるプリンセス・ルイーザ・インレットの神秘的な美しさは、バンクーバーの近くとは思えないほど。落差420mの壮麗なハーモニー滝にも、このボートならすぐ近くまで行くことができる。なお、秋にはグリズリー・ウォッチングなどのワイルドライフの観察ツアーも人気だ。

(取材 宮田麻未、写真 神尾明朗) (取材協力 ディスティネーションBC)

 

露天風呂の雰囲気も味わえる、ペインティッド・ボート・リゾートの贅沢なスパ

   

 

神秘的なフィヨルドの入り江に面したウエストコースト・ウィルダネス・ロッジのパティオ

 

氷河が削り取った崖から流れ落ちる、落差420mのハーモニー滝

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。