2019年6月6日 第23号

バンクーバー・オペラが次の時代のオペラ歌手発掘のために開催した歌唱コンテスト『VOX』。カナダ全域から応募があった約100人以上の中から、決勝進出した8人が4月26日、クイーンエリザベス劇場の舞台で歌い競った。その中のひとりに、ゼイナン鈴木さんがいた。

 

クイーンエリザベス劇場の舞台で歌ったゼイナン鈴木さん(撮影 Justin Ecketsall)

 

歌や音楽を始めたきっかけは?

 子供のころから車の中や合唱団で歌っていました。幼少期から始めたピアノは8年生まで続け、ハイスクールに入ってから歌の個人レッスンを受けるようになりました。ハイスクールではトランペットも吹いていました。

歌を真剣に考えたのはいつ頃でしたか?

 大学進学を考えたとき、音楽科に進もうと準備を始めました。マギル大学に入って大学院に進み、この5月に修士課程を修了しました。

マギル大学のオペラでは『ランメルモールのルチア』でエンリーコ、『アルバート・ヘリング』のゲッジ牧師ほか、『魔笛』でパパゲーノ役をこなしたそうですね。好きなオペラはありますか?

 自分が人前で歌った作品は時間をかけて練習し周到に用意したので、どれも思い入れがあります。

モントリオールで7年過ごしたそうですね。

 バンクーバーから引っ越して、最初の冬はひどいものでした。マイナス40度になることもあり、つらかったです。でもしばらくすると、寒い日は外に出ないようにしたり、寒さ自体にも慣れてきたのだと思います。バンクーバーに戻ると、ここの冬はモントリオールの春や秋のような気がします。モントリオールには多様な文化があり、そこで7年間生活して大学に通ったことでバンクーバーとは違うものが身についたと思います。

おばあさまのルース鈴木さんも、以前はオペラに出ていましたね。バンクーバーオペラ『アイーダ』(1970年)の小役“女祭祀長”の独唱でデビュー、『トゥーランドット』(1972年)の準主役“リュー”、『カルメン』(1975年)のフラスキータ役など。

 音楽の世界でいつも情熱を持つ祖母からは、たくさんの影響を受けています。ピアノや歌について、ほかの先生から習ったことの裏づけや、ときには違った見方も教えてくれました。

バンクーバーオペラの歌唱コンテストについて

 ヤング・アーティスト・プログラムのオーディションを通過して決勝出場権をもらったときは、とてもうれしかったです。生まれ育った町の、それも祖母が立ったことのあるクイーンエリザベス劇場の舞台で歌えることは光栄でした。

 人前でどう自分を表現するか、そして将来自分をどう表現していきたいのかを学ぶ、とても貴重な体験でした。

今後の予定は?

 次は6月末にエドモントンにあるオペラ・ミュージカルシアターNUOVAの音楽祭で上演される『シークレット・ガーデン(秘密の花園)』で主人公の後見人、アーチボルド・クレイヴン役をいただいています。

将来の夢は?

 この夏はバンクーバーのビーチでプールの監視員をします。そのあとはいろいろなオーディションを受けて、可能性を試してみたいです。また将来の選択として、医学部進学のためのMCATという試験の勉強もしていきたいと思っています。

 

ゼイナン鈴木: Zainen Suzuki 
ブリティッシュ・コロンビア州バーナビー市出身。ピアノを幼少期から、合唱団ほか、歌の個人レッスンは13歳から始めた。マギル大学修士課程終了(声楽パフォーマンス・オペラ専攻)。趣味は水泳、科学、ハイキング、バレーボール、パドルボーディング、ゲーム、読書、新しい音楽を見つけること。家族はパイロットの父、建築家の母、姉タイシャ(Tysia)さんと弟ゲンダン(Ghendun)さん。ルース鈴木さん(さくらシンガーズ音楽監督)は祖母。

(取材 ルイーズ阿久沢)

 

イタリア語のオペア『ロデリンダ』(ヘンデル作曲)より『Di Cupido impiego i vanni』を歌ったゼイナン鈴木さん (撮影 Justin Eckersall)

 

クイーンエリザベス劇場でのバンクーバー・オペラ歌唱コンテスト『VOX』に出場したゼイナン鈴木さん(撮影 Justin Eckersall)

 

祖母のルース鈴木さんと

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。