「ライオンズは自分にとって 家族みたいなもの」

“Equipment Manager”という仕事をご存じだろうか?選手のユニフォームから、ヘルメット、ボール、用具などチームのあらゆる関連機器のメンテナンスを行う仕事だ。
 カナディアン・フットボール・リーグ(CFL)でバンクーバーをホームとするBCライオンズで、この“Equipment Manager”を担当しているのが日系3世のケン・カトウ・カスヤさん。ライオンズとはもう34年の付き合い。「結構長いですよね」と笑う。
 長く続いたのは、チームが、フットボールが、この仕事が好きだから。この道一筋。「もう他にできることはないかな」と笑った。

「ライオンズは自分にとって家族みたいなもの」

13歳の時にライオンズの一員となった。最初はボールボーイ。その頃、イースト・バンクーバーに住んでいて、ライオンズがホームグランドとしていたエンパイア・スタジアム(PNE敷地内)が近かったこともあり、誘われたのだという。Assistant Equipment Managerとして正式に就職したのは1984年。以来、この仕事一筋でここまで来た。
 「仕事は楽しい」と笑う。ヘルメットは毎試合後、クリーニングする。アメフトはとにかく選手数が多い。ヘルメットの数も半端ではない。ショルダーパットなどの防具類も、すべてメンテナンスして、選手が試合のたびに万全の状態で使用できるよう整える。そうして20年やってきた。チームからの信頼も厚い。「スタッフも、選手も、いい人たちばかり。彼らのために働くのは楽しいし、私のことも良く気遣ってくれるし」。34年間付き合っていればもう家族同然。「ここまでずっと良好な関係できているよ」と会話中も終始笑顔だ。
 今までの中でどのライオンズが一番好きだったかと聞くと「う〜ん」と唸り、「毎シーズン良かったし、ずうっと楽しかったし」と甲乙つかない様子。家族なチームに順位はないのだろう。
 今季はライオンズ創設60周年だった。これまで6度のグレイカップ制覇を達成し、そのうち5回を経験している。中でも2011年は新しくなった現在のBCプレースで優勝を果たした。そして来季また、グレイカップがBCプレースに戻ってくる。「あれは楽しかったね」と2年前を思い出す。「ここ(BCプレース)でのプレーはいつも楽しいけど、チャンピオンシップは特別だね」。来季もホーム優勝の縁の下の力持ちとなるよう、ますます仕事に磨きをかける。

家族全員フットボールファン

日系3世のカスヤさんだが、母親をはじめ、兄弟、親戚、ほとんどみんな日本語を話すが自分だけは「分かるけど、それほどうまくない」と照れ笑いする。日本語を話すのは母親との会話の時くらいだったそうだ。そのお母さんも大のライオンズファン。1980年から2008年まで、ほとんど欠かさず試合を見に行っていたという。「試合自体はよく理解していなかったみたいだけどね。でも、ほんと好きだったみたいだよ」と声をあげて笑う。親戚もみんなフットボール好きだと楽しそうに話す。
 アメリカのNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)とは単純に比べられないが、「(CFLは)いいリーグだ」と思っている。フットボール自体も面白いし、いい選手も多い。カスヤさん本人は、高校時代にプレーしていたことはあるが、プロの経験はないという。「フットボールは見ていて楽しいスポーツだと思う。日本人ファンも多いんじゃないかな」。
 BCプレースになってから、一試合平均約3万人のファンが大歓声で応援する。エンパイア・スタジアム時代でも2万5千人が毎試合詰めかけていた。そんなファンに愛されるBCライオンズの一員として、これからもこの仕事を続けていきたいと言う。
 「本当にいいチームだし、いい人たちに囲まれてやって来ているし、これからもできる限りチームの一員としてこの仕事をやっていきたいと思う」とカスヤさん。「34年もやってきて他にできることも分からないしね」と破顔した。
(取材 三島直美)

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