ずっと好きだった絵を描くことを仕事に

日本の三重県で3歳まで過ごしたあと、家族で米国ニュージャージー州に渡り、その1年後、BC州リッチモンド市へ移住してきたという。現地校に通いながら補習校にも10年間通い続けたので、英語も日本語も流暢だ。「もともと日本の本や漫画などが好きでよく読んでいましたので、(日本語の勉強も)それほど大変とは感じなかったです」という。
高校卒業後は、栄養士を目指してブリティッシュコロンビア大学で学び始めたが、「あまりなじめなくて」進路を変更した。その後はバンクーバーにあるビジュアル・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザイン(VCAD)に入学して3Dデザインやアニメーションのコースを取った。VCADでは基本的な絵を描くことからコンピューターを使ってのアート作品の制作などが1年半という短期間で学べることも入学を決めた理由の1つ。昔から絵を描くのが好きで、高校の時にはAPアートのコースを取っていたという。APとはカレッジや大学レベルの内容を高校で受けることができるプログラムで、祐紀名さんの高校では7名ほどしか受けていなかったというから相当な力量が求められるといえる。VCADでコンピューターアートを習い作品の幅も広がっていったという。
同校で講師をしていた人が自分のスタジオを興し、祐紀名さんも声をかけられて卒業後はそこで働くことになった。ストーリーボードというアニメの絵コンテを制作するスタジオでのアシスタント業務。「雇われていたというわけではなく、インターンのような形だったので仕事の時間も長くて大変でしたね」という。そこでの仕事を終えて現在は、フリーで個人顧客のリクエストに応じて絵を描いたりしている。リステルカナダ社を通して、プロスキーヤーの星野純子選手(モーグルの日本代表候補)の絵を描くことを依頼されたこともあるという。

 

日系祭りマスコットキャラクターをデザイン

8月31日と9月1日にバーナビー市の日系センターで開かれる「日系祭り・日系の心」の実行委員から依頼されて、マスコットキャラクターをデザインした。家族向けのイベントなので子供の心をつかむようなものをということで、シンプルなものをいくつか考えていった。しかし他の人の真似の域を出ていない気持ちが拭えずにいた。そこで自分のスタイルをもっと反映させたキャラクターを作っていき、周囲も納得するものが出来上がったという。「今回日系祭りに参加して、自分が絵を描いて喜んでもらえるのが嬉しい、と感じました。これからも自分のできるやり方でコミュニティーに貢献していきたいです」という祐紀名さん。同時に自分の作品を制作して自身のウェブサイトで紹介していきたいとのこと。作品をもっと外に発表していきたいですか?と尋ねると、「そうですね・・そういうことはどうやったらいいのか分からなくて。でも周りの方に助けて頂いて少し方角が見えてきたところもあります」という。
リッチモンドで7月末に開かれたフィルムフェスティバルで、祐紀名さんはアニメと漫画のワークショップの講師を務めた。「年齢制限がなく小学校低学年から大人の方と幅広く、そこが大変でもあり面白くもありました」。今回の日系祭りではキッズコーナーもあり、祐紀名さんはフェイスペイントを担当する。絵心の欠片もない記者からすると難しそうなのだが、「楽しいですよ。私は好きですね」と笑う祐紀名さん。これからの活躍が楽しみだ。

 

竹内さんのウェブサイトwww.yukinatakeuchi.com

 

 

(取材 大島多紀子)

 

2013年8月22日 34号掲載

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