この「お話発表会」は、「自作または童話などの物語を覚えて発表する」、「自分の体験をまとめて話す」、「何かについて思っていることを発表する」、「創作、あるいは既成の詩を覚え発表する」、低学年が1分以内、高学年が3分以内で、発表することになっていて、原稿制作と発表の練習を重ねて全員がこの日にのぞんだ。

開会の挨拶に立った日本語教育振興会副会長のベイリー智子氏は、子どもたちへ向けて「日ごろ勉強した成果を話し、また、ほかの人の話を聞くことでさらに勉強ができます。楽しんでください」とやさしく語りかけた。
来賓代表として挨拶に立った在バンクーバー日本国総領事岡田誠司氏は「私は1月25日に着任したばかりで、皆さんとお会いするのは初めてですが、一生懸命に勉強された成果を聞くのが楽しみです。また、この学校は1906年に開校以来107年間、皆さんが盛り立て日本語の振興に寄与されてきたことに敬意を表します」との挨拶の後、小学科の第一部からスタートした。

やや緊張気味で壇上へ上がる姿がほほえましい。しかし、すぐに落ち着き、きれいな日本語の発音で、自分の思いをすなおに、一生懸命に話す姿には感動を覚える。お話の内容は、好きなスポーツ、ペットとの交流、日本へ行ったときの話や、おじいさん、おばあさんと過ごした思い出話、創作童話など、心に浮かんだ題材を1分間以内にきちんとまとめて発表していた。

第二部が始まる前、5歳児の合唱。「アンパンマン」と「おもちゃのチャチャチャ」が元気一杯に披露され、ほっと一息。第二部の小学科の発表が終わり、基礎科、中・高等科がスタート。高学年にもなると、話の組み立ては論理的になり、描写にもレトリックが加わり説得力がぐんと増してくる。自分の進路のこと、人生観、青春の悩みなども題材となり、おとなも考えさせられる発表が多くなった。

子どもたちの話を聞いていると、ここがカナダであることを、ふと忘れてしまうほど、日本語が美しく使われている。しかも、このこどもたちは英語も普通に使っているのだと思うと、国際派のバイリンガーの育ちを確信する。
「お話発表会」の総評と、参加のお礼を述べた日本語教育振興会・会長の馬目広三氏は、「発表したみんなが緊張したように、話を聞いていた先生も、お父さんやお母さんも緊張した。これを乗り越えていくと自信につながります」。また、野球の大リーグのイチロー選手の言葉にちなんで、繰り返し続けることの大切さを述べた。「バンクーバーにはこんなに上手に日本語を話す子どもたちがいる、その教育機関としての本校を広く知ってもらうために、お話発表会を毎年開催しています。ご父兄をはじめ、本校の先生たちのおかげで、その趣旨は十分に伝わっていると思います」と感謝の意を述べた。この後、劇団「座・だいこん」による短編劇「なんておもったら」の笑いの渦で、「お話発表会」を終了。帰りには、後援のグリコ・カナダより「ポッキー」の提供があり、全員おいしいお土産を手に会場を後にした。

 

(取材 笹川 守)

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