2019年5月23日 第21号

今年5月1日から日本の元号が「令和」となった。その由来が日本最古の歌集である万葉集にあるということで、にわかに脚光を浴びている。その万葉集で仮名文字を練習する「万葉集を書く会」が、ブリティッシュ・コロンビア州バーナビー市の日系文化センター・博物館で月1回開催されている。その教室の様子を紹介する。

 

「令和」の由来となった万葉集「梅花の歌」序文。藤木さんの書で紹介した

 

万葉集の魅力に触れる

 主宰しているのは書家の藤木房子(紫苑)さん。リッチモンド、バンクーバー、バーナビーで書道教室を開いており、数年前から万葉集を書くワークショップを始めた。

 最初に一人ひとりお手本と解説のプリントが配られ、歌の内容や背景について簡単な説明を聞いた後、実際に書いていく。毎回1つの歌を練習した後、清書をする。料紙(仮名文字用の紙)や色紙などに清書すると、立派な作品ができあがる達成感も感じられる。お手本や清書用紙は講師である藤木さんが用意、受講料に含まれている。

 このワークショップを開くことになったきっかけについて藤木さんは、「自分自身が仮名を学習するうえで、万葉集が好きで万葉歌をよく書いています。それでぜひ皆さんにも紹介したいなと思ったのが発端です」と話す。「万葉集は、天皇、皇族、貴族をはじめ、防人だとか一般の人たちが日常生活の喜びや悲しみを歌っているものが、たくさん入っているんです。その当時の庶民の生活状況も分かるし、この時代の人も私たちと変わらないなというところが多々あるのが面白いんです」と万葉集の魅力を語る。そして「歌を書くのを中心にしているんですが、歌の内容など調べていくとますます面白くなってくる。違った楽しみも生まれてきますね」という。

 

参加者の声

 毎回参加しているという小林さんは、「万葉集がもともと好きなので。やはり、書いてみると本を読んでいるだけとは全然違いますね。臨場感というものを感じるというか。万葉集を読み返してみると、むかし読んだのと違う感じが出てくるのも楽しい。万葉集というのは日本人の原点というところがありますからね」と言う。

 他にも、「古典が好きなので、(万葉集を書く会を)先生がやられるというのでいい機会だなと思って習ってるんです。万葉集というのは日本の最大の古典という感じなので、習うことによって一層深くわかるようになります」。「字が上手になりたくて通信講座を受けています。家だと集中して書くのが難しいんですが、こちらでは集中して書けるし、直接ご指導いただけるのがいいですね」。「居合をやっているんですが、居合でハイランクの人はお茶をやるんです。それで私もお茶を始めて、お茶をやっていると書のほうにも興味を持って始めたんです。私はスポーツが好きなんですが、こうやって心落ち着けて書くのも楽しいです」といった感想が寄せられた。

 現在は日系センターだけで開催されているが、バンクーバーでも開きたいと考えており参加者を募集しているところだという。通常の書道教室に通っていない人や全くの初心者など、誰でも参加できる。なお、参加希望の際には、事前に予約が必要。初めて参加する場合は、書道の経験などについて聞かれるが、それも一人ひとりに合わせたお手本を用意するため。初心者には練習用のお手本も用意してくれる。また道具がないという人は相談してほしいとのこと。

 藤木さんによると、最近はペン字学習の希望者が多いが、毛筆を学ぶと自然とペン字も上達するようだという。毛筆で書くというと近寄りがたいイメージを持つ人もいるかもしれないが、今は日系の店で最低限必要な道具が安価で手に入るので、まずは「万葉集を書く会」のようなワークショップで気軽に初めてみるのもいいかもしれない。

 

「万葉集を書く会」
日時:毎月第2土曜日 午前10時15分から約1時間半
場所:日系文化センター・博物館
1回25ドル ドロップイン形式だが、事前に予約が必要

書道教室 通常クラス
月3回
● リッチモンド教室 月・火曜 午前10時〜、土曜 午前10時〜/火曜 午後6時半〜
● バンクーバー教室 火曜 午後11時半〜 
● バーナビー教室(日系センター)水曜 午前10時15分〜
通信講座もあり。月謝や詳しい場所に関しては問い合わせを。詳細に関しては弊紙パート2のコミュニティのお知らせ欄も参照してください。

問い合わせ先:書道研究 一成会 電話:604-273-1621 メール:This email address is being protected from spambots. You need JavaScript enabled to view it.

(取材 大島多紀子)

 

一人ひとり丁寧に指導してもらえる

 

講師の藤木房子(紫苑)さん

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。