2019年3月28日 第13号

今でも熱烈なファンを持つアメリカの人気シリーズ「スター・トレック」で、「ヒカル・スールー」役で人気を博した日系アメリカ人俳優ジョージ・タケイさんが、バンクーバー日本語学校並びに日系人会館を訪れた。 自身も日系人として第2次世界大戦中に強制収容を受けた経験があり、カナダの戦前の日系人街に大きな興味を示していた。

 

ジョージ・タケイさん(左)と上村ジーンさん。サインをしてもらったタケイさんの自叙伝『To the Stars』を持って記念撮影

 

日系カナダ人の豊かな歴史に感動

 ジョージ・タケイさんは3月11日に、パートナーのブラッド・タケイさんと日本語学校を訪れた。まだ肌寒さが残るバンクーバーで、日系カナダ人地区史跡めぐりの一部を体験した。日本語学校の校舎内を案内された後、アレキサンダー通りから西側1ブロック「旧日本人街」と言われる一角を説明を受けながら回った。

 日本人の名前が残るビルやバンクーバー朝日軍のグラウンドだったオッペンハイマーパークの存在に驚きを隠せないようだった。

 「私はアメリカのナショナルトラストの会員でもある(歴史的建造物などの)保護主義者なんです」と笑った。建物には一度壊すと二度と元に戻らないものがあると言う。「このバンクーバーの旧日本人街地区には1920年代、30年代の建造物が残されていて、建物が日系カナダ人の経験と歴史に深く根付いていることに感動しました」。

 バンクーバーを訪れるきっかけは、日本語学校理事のローラ・サイモトさんからの電話だったという。「突然電話がかかってきて、ツアーを体験しないかと言われたんです」とうれしそうに話す。「初めから(パートナーと)2人で訪問するつもりだったので、当時を知る日系カナダ人の人たちの話を聞きながら回れたのはすごく面白かったですね」。

 自身もアメリカで強制収容を経験している。タケイさんはカリフォルニア州ロサンゼルスに渡った日系3世。5歳の時に1941年12月の真珠湾攻撃に端を発するアメリカ政府の日系人強制収容政策にあった。家族が送られたのはアーカンソー州。日系カナダ人と同じ境遇だと語る。しかし「カナダの日系人の方がひどい扱いを受けていると思う」とタケイさん。「だってカナダは寒いからね」と、この日集まったカナダの強制収容を体験したシニアたちの笑いを誘った。真面目な話の中にもどこかユーモアを交えて場を和ませるのはタケイ流。日系コミュニティ関係者から贈り物を受け取り、「思いがけないご褒美をいただいて感謝しています」とバリトンの効いた日本語で応じた。子供の頃はいやいや通わされていた日本語学校も、今では日本語を話せることを親に感謝していると笑った。

 日系カナダ人コミュニティは日本語学校を中心に、日本語を教え、コミュニティを築き、人々が支え合っている、「そうしたコミュニティの存在にすごく興奮し、感動しています。日本人という共通の遺産にすごく誇りを感じます」と語った。

 

バンクーバーで日系アメリカ人強制収容をテーマにしたテレビドラマを収録

 今年1月からバンクーバーで収録されている、日系アメリカ人の強制収容をテーマにしたテレビドラマ「ザ・テラー:インファミィ」に、強制収容を受けた経験を持つ元漁師役で出演。実際に強制収容経験者としてアドバイザーも務めている。

 今回タケイさんを招待したサイモトさんは、「バンクーバーで日系アメリカ人の(強制収容の歴史を)撮影しているので、日系カナダ人の歴史も知ってもらいたいと思って声を掛けました」と語った。フィルム関係者の「ご縁」を使って突然招待したと笑って告白。「シニアの人たちにもすごくいい時間になったと思う」と語った。

 強制収容経験者としてあいさつした元医師の堀井昭さんは、「自分たちも日系アメリカ人の歴史ももう少し学ぶべきだね」と言い、タケイさんについては「TEDトークでの話を見たけど、非常にうまく話せる人だね」と笑った。

 サイモトさんは、こういう影響力のある人が日系カナダ人コミュニティを訪問してくれて、その歴史に光が当たることはすごくうれしいと語った。

(取材 三島直美) 

 

バンクーバー朝日元選手上西ケイさん(左)と朝日の帽子を被ったジョージ・タケイさんのツーショット(写真提供:ジョン・グリーナウェイさん)

 

日系カナダ人地区史跡めぐりの出発点バンクーバー日本語学校を案内するローラ・サイモトさん(右)とジョージ・タケイさん

 

日本語学校内の保育園「こどものくに」で子供たちとのコミュニケーションを楽しむタケイさん

 

日本語学校の校舎前にあるモザイクデザインの説明に聞き入る

 

史跡めぐりの途中でテレビ局グローバルBCが合流

 

日本語学校での歓迎会。堀井昭さん(右)があいさつ。ジョージ・タケイさん(左)とパートナーのブラッド・タケイさん(中央)

 

タシメ博物館ライアン・エランさん(右)からの贈り物を持って参加者に話すタケイさん

 

参加者からのメッセージとタケイさんの名前の日本語表記を書いた色紙を贈られうれしそう

 

ジョージさんは「みなさんを見ているとスター・トレックのヴァルカンを思い出す」と言って、“Live long and you are prospering”とお決まりのポーズで笑った(写真提供:ジョン・グリーナウェイさん)

 

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