2018年5月10日 第19号

バンクーバー日系人合同教会で4月29日、女声合唱団カトレアコーラス結成27周年記念コンサートが開かれた。オープニングは歌う喜びを詠ったオリジナルソング『カトレアに』。軽やかな歌声が約200人の集まった会場に響きわたった。明るい歌声ときらめく笑顔に加えて、強く観客の印象に残ったのは全曲暗譜で歌う姿だ。

 

歌詞に込められた思いを明瞭な発声で聴衆に届けたカトレアコーラス (写真提供 Pofu Photograghy)

 

大事な歌詞を身体に入れ、思いと視線を一つにして

 カトレアコーラスはバンクーバー補習校の生徒の母親たちによって1991年に結成された。当初、メンバーは子育ての真っ最中。多忙な中、時間をやりくりして練習に集まった。「好きな歌を歌って帰る時は皆、幸せな顔になっていました。その顔を見るのがうれしくて、私も今まで続けることができました」とミュージック・ディレクターの内藤邦子さんは振り返る。

 「歌は音楽の中で唯一詩がついていて、より具体的に思いを伝えられるもの」と、歌詞を重視した選曲を行う同グループ。全曲暗譜を始めたのは10年ほど前からだ。その過程をメンバーたちはこう語る。「(楽譜ばかり見ている私たちに内藤先生が)『寂しいから(指揮の)私を見て』と。最初は反対もありました」「コンサートの曲目半分だけの暗譜から始めました。暗譜だと先生に集中できるし、笑顔も増える。そうした暗譜の良さを実感して現在の全曲暗譜の形になりました」

 しかし18曲全曲暗譜はそう簡単なことではない。「テープに録音して車でも家でも聴いています」「歌詞を紙に書き出してキッチンに貼っています」「コンサートという目標があるから覚えられます」。下は40代、上は80代となったメンバーたちは、不断の努力で暗譜を実現している。そして「年を取って覚えが悪くなっても、先生が私たちの気持ちを分かってくださる」「先生が朗らかで一人一人の中からいいものを一生懸命引き出してくださる」と、内藤さんとの信頼関係がメンバーの努力を支えているようだ。またこんな声もーー「週に1度の練習なのに、まるでひと月ぶりのように話すのが私たちの特徴」「一人で歌うのでなく、みんなでハモるのが楽しい」ーー仲間と集い、歌う喜びが活動の大きな原動力だ。

 

『りんご追分』など花がテーマのメドレーで春を表現

 在バンクーバー日本国総領事館多田雅代首席領事の祝辞を受けて始まったコンサートの前半は、『ビビディバビディブー』『あの素晴らしい愛をもう一度』などの懐かしい歌から、AKB48の歌で昨年のNHK全国学校音楽コンクールの課題曲となった『願いごとの持ち腐れ』までバラエティー豊かな曲目を披露。

 中盤はエミリー・ローガンさんのピアノ伴奏でトーマス・ローさんのフルート独奏、そして宮崎 亜野さんのソプラノ独唱でステージに変化を創出した。後半は花がテーマのヒットメドレーで締めくくり、最後はフルート演奏が加わっての『空より高く』でアンコールに応えた。歌唱を終始盛り上げていたのは、シェパードひろ子さんの丁寧で繊細なピアノ演奏だ。

 

コンサートを終えて

 観客からは「ハーモニーが素晴らしかった」「全曲暗譜の姿に感嘆しました」「日本の歌が懐かしく癒されました」という感想が多かった。そして元プロのアナウンサーから「歌詞がとてもクリアーで思いがしっかり伝わり感動した」という言葉を受け取り「何よりうれしく思いました」と内藤さん。「そして無理難題にも果敢に挑戦してくれた我がカトレアコーラスの仲間たちを、私は心から誇りに思います。年を重ねてもなお美しい声を求め続け、聴いて下さる方お一人お一人の心に響く歌を歌い続けてまいります」と語り笑顔を見せた。

(取材 平野香利)

 

内藤邦子さんは暗譜で歌うメンバーを指揮で確実にリードして (写真提供 Pofu Photograghy)

 

情感豊かな表現でコンサートを盛り上げた伴奏者のシェパードひろ子さん

 

フルートの演奏でさわやかな風を吹き込んだトーマス・ローさん

 

カトレアコーラスの日加友好への貢献に謝辞を述べた多田雅代首席領事

 

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。