2017年12月7日 第49号

久しぶりに雨が上がった12月3日、バンクーバー市内の日系聖十字聖公会で九州・沖縄作曲家協会主催による『原田大志クリスマス・バイオリン・リサイタル』(メディアスポンサー:バンクーバー新報)が開かれた。“お子さまのご来場歓迎”と宣伝したコンサートには小さな子ども連れの家族を中心に会場満席の約70人が参加。バッハ、原田さんのオリジナル作品ほか、NAVコーラスを交えてひと足早いクリスマスムードを楽しんだ。

 

原田大志さん

 

音楽交流を目指して

 「私の所属しております九州・沖縄作曲家協会がバンクーバーでの国際交流コンサート開催に向けて動いていたところ、バンクーバー・インター・カルチュラル・オーケストラ(VICO)とのコネクションができ、2019年6月のVICO音楽祭を日本特集としてくださることになりました。協会員の作品を通して、バンクーバーの音楽ファンや音楽家たちとの交流をしたいと思っております」と話すのは、同協会国際交流ディレクターの米倉豪志さん。

 この取り組みを進めるために同協会副会長である原田大志さんが当地を視察に訪れたことから、NAVコーラスの協力を得てコンサート開催に至ったというものである。

 

お子さま連れでの参加を

 音楽教育に携わりながらバイオリニストとして活動する原田さんは、どうやって子どもをクラシックコンサートに連れていかれるかが課題のひとつだという。米倉さんも「コンサートに出かけるたびに、自分の子どもに聴かせてあげたいと思っておりました。またクラシックコンサートは、たいてい夜遅く開催されるので、小さい子どもを持つ親はなかなか出かけることもできません。今回演奏していただくみなさんのご了承を得て、お子さま連れで参加できるコンサートとさせていただきました」と話す。

 とはいえ、演奏者にも聴衆側にも集中力が削がれる可能性があることも事実。会場隣の部屋には子どもたちが遊べるクラフトテーブルを設置するなど工夫を凝らした。

 

参加することが大切

 文字通り、会場はお子さま連れファミリーを中心に満席となった。

 冒頭で演奏した『無伴奏バイオリンのためのソナタとパルティータ第3番』(バッハ)では、意外にも幼児が静かに座って聴いていたので、原田さんは逆に、この状態をどう維持できるかに心血を注いだという。

 イザイノ・ユージンというペンネームで書いた自作の『テ・ナチュール』はラテンのリズム“チャチャチャ”を取り入れた軽快な作品。スペイン色豊かな『序奏とロンド・カプリチオーソ』(サン=サーンス)のあとは、NAVコーラスとともにクリスマスソングでエンディング。

 和葉くん(4)と一緒に参加した児島佐千子さんは「まわりを気にせず、子ども連れでも安心して楽しめました」と感想を述べた。

 「(コンサートに)参加することが大切なのです」と語る原田さん。2019年のVICO音楽祭参加、また2020年のVICO日本ツアーに向けて、日加の音楽交流の第一歩を踏み出したようだ。

 

原田大志(はらだ・たいし):バイオリン、ビオラ、作曲。東京芸術大学音楽学部卒業、同大学大学院修士課程修了。バイオリンを岸辺百百雄、田中千香士、前橋汀子の各氏に師事。その後、札幌交響楽団コンサートマスター、東京室内管弦楽団、東京シティフィルハーモニック管弦楽団の客演コンサートマスターを務める。
1991年、琉球放送創作芸術祭音楽部門で大賞を受賞。現在、福岡教育大学准教授。あいれふ弦楽四重奏団、コレギウム・プリエール、博多『楽』メンバー。RKB女声合唱団常任指揮者。

(取材 ルイーズ阿久沢)

 

NAVコーラス(ピアノ伴奏:ウスイ朝香さん)のみなさんと原田大志さん(中央)、原田さんのピアノ伴奏をしたシーズン・ワングさん(前列右)、コンサートを企画した米倉豪志さん(左端)

 

お子さま連れで参加できるコンサートを提案した米倉豪志さん。健琉(たける)くんと妻の直子さん

 

満席となった会場

 

 

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