2017年11月2日 第44号

バンクーバーのアネックスシアターで10月22日、詩人・三角みづ紀さん (札幌在住)と高山宙丸さん(バンクーバー在住)による詩のパフォーマンスイベントが行われた。

終了後、観客から寄せられたのは「独特の世界観に引き込まれた」「自分を肯定されている気がした」という共感の声だった。

 

三角みづ紀さんの繊細な感性が声と言葉から伝わってきた(写真提供 Noriko Tidballさん)

 

日本の詩壇から 実力派詩人を招いての渾身の企画

 日系カナダ人作家、ジョイ・コガワさんともコラボレーションをしているアートグループ、タサイが主催となり、昨年始動したプロジェクト「ジャパニーズ・ポエッツ・ノース・オブ・ザ・49」。日本の詩人、桑原滝弥さんを招いて開催したステージは記憶に新しい。  

 今回のゲスト、三角みづ紀さんは2004年、23歳で現代詩手帖賞を受賞。その後、中原中也賞、萩原朔太郎賞をはじめ、数々の賞を受賞。7冊の詩集を世に生み出した注目の詩人である。

 

人間を見つめる明と暗の形  

 ステージ前半では、宙丸さんが登場。一人芝居の形式で自身の詩を発表した。『言葉の愛し方』では、「詩人は言葉を身にまとう」と語り、文字通り、自身が身にまとう衣装にプロジェクターで英訳詩の言葉を映し出した。江戸の街頭での物売りの口上をパロディにした『iPhone売り』では、大きな身振り、豊かな表情と明るい声色でおかしみをたっぷりと表現。傍らでは山本篁風(こうふう)さんが和楽器でBGMや効果音を奏で、時代感を醸し出した。

 ステージ後半は、言葉が紡がれるような三角さんの朗読。最初のたった一つの声で、異空間が作られた。「あした、せかいがおわったらどうする?」その場で声を録音し、繰り返される機材の効果で、三角さんの声や言葉が重なり合う。それはまるで人々の脳内で、繰り返し響く祈りのようでもあった。

 「私を底辺として幾人もの女が通過していく」「私は腐敗していく」(『私を底辺として』)——といった言葉の放出に、三角さんの詩が「苛烈(かれつ)な詩」「鮮烈な言葉の事件」と評されてきた理由がわかる。

 

三角さんの作品作りへの思い  

 20歳で膠原病(こうげんびょう)のSLE(全身性エリテマトーデス)を患い、療養中に本格的に詩作と向き合い、発表した。痛々しい詩を数々生んだ当時と今も「作風が変わったと言われるが流れる空気は同じ。本質は変わらない」という。当時の作品は自らにナイフを突き立てているような印象もあるが「難病になり、詩の投稿を始めた時から絶対に死にたくなかった。だからむしろ生と死について書き続けてきました。『あした、せかいが』は何気ないありきたりのことが、どんなにか大切かということが描きたくて書きました。東日本大震災の後の作品です」

 現在は、詩作に適していると選んだ北の街・札幌に暮らす。最近は日本精工などの企業PR、山口で開催される花博のための詩作などにも取り組んでいる。 9月に発行した初のエッセイ集も好評で、その活動の幅は広がっていく。

 

ステージを終えて

 醜いと否定されかねない感情も、つながりへの憧れも、生きているからこその賜物だという大きな確信を、出演者、そしてスタッフ一同から感じた本イベント。 何かを放ち、何かを受け取った人たちのさわやかな表情が印象的だった。

(取材 平野香利)

 

『iPhone売り』を披露する高山宙丸さん。「声が通るステージでとても気持ちがよかったです」と感想を

 

山本さんの尺八、横笛、太鼓が詩情を盛り上げた

 

司会のゆりえ・ほよよんさんは、詩の鑑賞の醍醐味を伝える機会にできたらとの思いで会を進行

 

冒頭で挨拶を行った岡井朝子在バンクーバー日本国総領事

 

 

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