2017年9月7日 第36号

9月2、3、4日の三日間、バンクーバーダウンタウンのグランビル通りと、クイーン・エリザベス・シアターなど五つの会場を使用して「カンパイジャパン! タイワンフェスト」が開催された。これはアジアン・カナディアン・スペシャル・イベント・アソシエーションがバンクーバー市ほかの協力を得て、2005 年から実施しているイベントだ。カナダの多様な人々を祝し、友好を図りたいとの主旨から、ことしは日本を取り上げ、多くの日本文化が紹介された。

 

バンクーバー・アートギャラリー前の広場に設けられたステージ。4日には日系コミュニティーのグループ、さくらシンガーズや沖縄太鼓、彩月会らの公演があった(写真撮影 西羅 愛子さん)

 

日本の老舗うちわ・扇子店も参加

 日本文化の趣深さが感じられたのはうちわと扇子のコーナー。「松 扇堂」のブランド名を持つ浅草の老舗うちわ・扇子専門店「松根屋」 から、うちわや扇子が展示され、的を狙って扇子を投げる遊び「投 扇興」や、うちわを作る体験ができるようになっていた。

 松根屋代表の山本慶大さんに「日頃、外国人に人気のある商品の デザインは?」と尋ねると「コテコテの浮世絵や富士山が一番受け ます」と回答。創業100 年を超えた同店では「伝統を引き継ぎつつ 時代に応じて変化を」と、水墨画家に原画の作成を依頼し、新しい デザインの扇子制作も試みている。

 山本さんにとって今回の展示販売の機会は思いがけないことだっ た。今春に台湾フェスティバルのマネージングディレクターを務める チャーリー・ウーさんが松根屋に視察に訪れ、招待を受けたという。 同フェスティバルは8月26、27 日にトロントでも開催されており、 松根屋はトロントに続けてのバン クーバーでの展示開催となった。 「温暖化、エコ、ということで見直 されている扇子が、海外で興味を 持ってもらえることで、日本の人 が海外から逆輸入的に興味を持つ こともある。そうして文化交流を して発展していけば」と山本さん は希望を語ってくれた。

 

フード、クラフトなど各種展示盛りだくさん

 フェスティバルの魅力の一つであるフードコーナーは、 バンクーバー・アート・ギャラリー裏側のロブソン通りに 設けられた。日本の串焼き、台湾の牛肉ヌードル、中国の シューマイやチャウメンなど、カナダらしい国際色あふれ る屋台が並んだ。

 歩行者天国となったグランビル通りには数々のテント が設けられ、ちぎり絵や折り紙などのクラフト体験コー ナーのほか、趣味を極めた人たちによる紙で作ったヒー ローのコスチュームや、世界各国のアンティークな装丁 のマッチ箱コレクションなども展示紹介された。また台湾 映画の上映や講演会など、台湾の歴史や芸術への造詣を 深めるイベントも連日開催された。

 

日本と台湾の利き酒コーナー

 バンクーバー・アート・ギャラ リー前には、エンターテイメント のステージと台湾の絵画などの芸 術作品を紹介するコーナーが設け られた。その隣は台湾と日本の利 き酒コーナー。酒造メーカーと輸 入販売会社が協同し、8種類の日 本酒を用意。それらを試飲できる ぜいたくな機会だった。

 

クイーン・エリザベス・シアターでのオープニングセレモニー

 前述のディレクター、チャーリー・ウーさんの挨拶に始まったオープニング セレモニーでは、台湾出身の政府関係者ほかのスピーチに続き、岡井朝子在バ ンクーバー日本国総領事が登壇。ウーさんが同フェスティバルの企画を岡井総 領事に情熱的に紹介した際のエピソードを交えながら、日本をテーマに選んで くれたことへの大きな感謝の気持ちや、この日フェスティバル会場を回って実感 した、多くの催し、多くのボランティアたちの存在と貢献に対する謝辞を述べた。 そして日本と台湾がカナダ建国150 周年の機会に友好を深められることに感謝し、「カンパイ!フレンドシップ!」という言葉で岡井総領事は挨拶を締めくくった。

 

日本と台湾の音楽の夕べ

 続いてステージで繰り広げられたのはメトロポリタンオーケストラのコンサートである。この日最高気 温28 度と蒸し暑かった中、汗を流しつつ情熱的にタクトを振った同オーケストラの音楽監督兼指揮者の ケン・シェさん。シェさんは台湾出身の親の元、カナダで生まれ育ち、ブリティッシュ・コロンビア大学 で音楽を専攻後、日本の桐朋学園、洗足学園で指揮課程を修了しており、本ステージに最適の人物だっ た。選んだ曲目は日本の曲から『千の風になって』『世界に一つ だけの花』『君を乗せて』、台湾の曲では日本統治下の台湾で生 まれ、日本で時代の波に翻弄された作曲家江文也が作った『台 湾舞曲』、そして陽気な台湾の曲『四季紅』。プログラムの中盤 では、台湾から来加した特別ゲスト、12 歳の天才ピアニスト、ハオ・ウェイ・リン君が登場し、モーツァルトの『ロンド ニ短調』 を演奏。非常に繊細な表現での演奏に大きな拍手が贈られた。コンサートでは、音楽に合わせ手拍子をとったり歌ったりと会場 全体が一つになる工夫も。

 台湾と日本の両文化を称え、両コミュニティーの交流に寄与した台湾フェスティバル。来年はフィリピンにフォーカスの予定だ。

(取材 平野 香利 / 写真 平野 直樹)

 

グランビル通りは屋台で賑わった

 

17歳のニン・シェさんが紙で作ったスーパーヒーローたち

 

武道のデモンストレーションに大勢の観客が注目した。写真はチェン式太極拳(写真:編集部)

 

武道のデモンストレーションに大勢の観客が注目した。(写真:編集部)

 

かつて松根屋で使用していた専用のカマを使っての、うちわ作り体験も催された

 

日本酒の利き酒コーナーで。左からアルティザン酒メーカーの白木正孝さん、アクシスプランニング社の笹森亜矢さん、岡井朝子総領事と夫君の岡井知明氏、アクシスプランニング社の小西隆之さん

 

同フェスティバルで日本にフォーカスを当ててくれたことへの感激と謝辞を述べる岡井朝子総領事

 

台湾フェスティバルの指揮を執るチャーリー・ウーさん

 

多くのジョークを交えながらオープニングコンサートを盛り上げた指揮者のケン・シェさん

 

台湾の12歳のピアニスト、ハオ・ウェイ・リン君と母のデル・ラン・チェンさん

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。