2017年7月13日 第28号

元ボクサーで、現在トレーナーのエイジこと、吉川英治さん。本紙連載「ノックアウトムービーズ」の執筆者でもあるエイジさんは2009 年49 歳の時、27 年ぶりに後楽園ホールでリングに上がった。

 

大学を休学してテリーの伴走を買って出たダグと吉川英治さん(写真提供 吉川英治さん)

 

テリー・フォックスが力をくれる

 その年齢で公式にリングに上がれる機会は通常まずない。 左足を捻挫していて、走り込みすらできていなかったが、「いつか」を待つうちに右足が故障する可能性だってある。「今がベスト」と判断し、試合に臨むのは彼には当然だった。開始30 秒で足が棒になり、体が動かなくなったが、エイジさんは心の中で最強の言葉をつぶやいた。「テリー!テリー!テリー!」。 「いつだってテリーを思えば一切の言い訳が消える」。持てる以上の力を出し切れた。翌年のラスベガスでの試合も同じ方法で乗り切った。

 

テリーの純粋さ

 テリー・フォックス。骨肉腫で右足を切断後、自分と同じように苦しむ人を作りたくないとガン撲滅の研究資金集めを志した。義足を付けた体でカナダ横断マラソンにチャレンジ。毎日42 キロを143 日間連続で走り続けた。それ以前にも1日10マイルのトレーニングを約150 日間積んでいる。肺へのガンの転移で横断は果たせなかったが、2 万4000ドルが集まった。

 テリーの母の語った話がある。チャリティランを終えた後のクリスマス。テリーは力なく悲しそうにベッドに横たわっていた。「 僕はクリスマスに母さんにプレゼントを贈るお金が1ドルもない」とテリーは言った。それを知った兄がテリーにお金をあげたという。

 エイジさんは言う。「彼の完全な純粋さが奇跡の根源。普通の青年だった彼は一番身近なヒーロー。人々が彼に学んで正気に戻ってもらいたい。テリーのような存在を知ることが重要な経験」。

 

テリーの素晴らしさから学べるように

 10 年ほど前からテリーの家族、そしてテリーの伴走車を担 当したダグと親交を深めてきたエイジさん。テリーへの強い尊敬の念が伝わり、2014 年テリーフォックス財団から日本親善大使の任命を受けた。

 エイジさんはブリティッシュ・コロンビア州バーナビー、ポートコキットラム等の小学校で、テリーについて語ったこともある。2015 年5 月、エイジさんがギルモア小学校で「テリーの勇気と行動、それが自分に力をくれる」と語った後、子供たちはマラソンに臨んだ。走り終えての感想を子供たちに聞くと「疲れてきたとき、エイジのように『テリー!テリー!』って言って力を出したよ」と記者に嬉々として語ってくれた。

 今年6月30 日には英語学校「iTTTi バンクーバー」で日本人留学生を前に、テリーの映画を上映し、彼について語る会を行った。

 他人の苦しみを感じ取り、全力で行動したテリーの生き様は、今後エイジさんによって、カナダを越えて伝わっていくことだろう。

(取材 平野香利)

 

吉川英治さん プロフィール
 東京都明大前の大川ボクシングジムでチャンピオンたちをコーチ。地域の安全とマナー向上のため、自警団「明大前ピースメーカーズ」を立ち上げた。また「腐った大人になるな」と人々を鼓舞するスピーチを、日本、北米、欧州の学校等で実施した。当地でもグラッドストーン日本語学園ほかで多数開催。
 映像専門誌「TV Technology」出版や映画製作の傍ら、今春バーナビー市にスパ「Tokyo Xpress-Better Hair. Better World」をオープン。目的はフィリピンの貧困で劣悪な待遇のボクサーや子供への経済的支援だ。日系センターほかでボクシングクラス「ママ・ファイト」も好評実施中。

 

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