2017年5月18日 第20号

5月11 日、バンクーバー日本語学校並びに日系人会館で「ア・スーツケース・オブ・メモリーズ」と題し、第二次世界大戦中の日系カナダ人の体験を振り返る詩を朗読するパフォーマンスライブが開かれた。

 

最新作『GENTLY TO NAGASAKI』に収められた詩を披露する コガワさん 

 

日系カナダ人の歴史を詩を通じて表現

 出演は作家ジョイ・コガワさんとバンクーバー在住の詩人ソラさんこと、高山宙丸(そらまる)さん。ソラさんは同校で過去に2回、日系カナダ人の戦時中の体験をテーマとした詩の創作とパフォーマンスを行っており、今回が3回目となる。

 会の冒頭、同校理事のローラ・サイモトさんが、自身の少女時代の体験を含めて挨拶を行った。サイモトさんはコガワさんの作品によって、日系カナダ人の負の歴史を語ってもいいんだという免罪符を得たと語った。

 

風船の中に押し込められた沈黙

 第二次世界大戦中の日系カナダ人の体験を描写したジョイ・コガワさんの自伝的小説『オバサン』。カナダ文学賞、米国図書賞を受賞したこの作品と、コガワさんの最新作『ジェントリー・トゥ・ナガサキ』からのインスピレーションをもとに、ソラさんが二つの詩を創作した。一つ目の『沈黙』は、突如強制収容された日系カナダ人の当時の思い、そして戦争体験に限らず、私たちが日ごろ痛みを経験する際に抱える思い、その両方の思いと対処の仕方がテーマだ。

 ピエロが抱えた沈黙でできた風船は、どんどん膨らみ、ピエロを押しつぶそうとする。その風船をコガワさんがペンを使って割る。その後「語ることのできない沈黙がある。語ろうとしない沈黙がある」と『オバサン』に挿入した心の叫びの詩を朗読するコガワさん。その語りは、穏やかながら、芯の強さを感じさせるものだった。

 イベント後半のトークタイムでは、約百人の参加者から次々と寄せられた質問にコガワさんがよどみなく答えた。「沈黙を誰も割ってはくれません。それを割ることができないと苦しみます。しかし、ソラさんは、その沈黙の風船を割ったところから自由が生まれると表現してくださいました。それが素晴らしい。そこには希望があります」「日系カナダ人の体験のようなことは、時代を問わず他国や民族においても存在すること。ぜひ普遍的なテーマとして捉えてもらえたら」。

 「高校時代の教科書で習った『オバサン』の著者に会える機会と知って来ました。パフォーマンスで使われていた比喩がとても心に響きました」(ジュリー・ホーファーさん)など、時にユーモラスで、時に真剣なパフォーマンスに好感を持ち、刺激を得たとの感想が聞かれた。

 

深刻なテーマをできるだけ柔らかく

 「多くの人に楽しんでもらいたくて、今回、詩の朗読にマイム要素を多く加えた作品になりました」と、ナレーションを担当したゆりえ・ほよよんさん。演技は舞踏家の平野弥生さんが指導。コガワさんと共演を果たしたソラさんは「ジョイさんとご一緒させてもらうのはとても落ち着く感覚がありました」と語り、コガワさんは「ゆりえさんやソラさんのおかげで、観客の皆さんと、こうしてつながりを持たせていただき、とても楽しい経験ができました」と皆、満ち足りた笑顔で語ってくれた。

(取材 平野 香利)

 

ユーモラスな表現も用いながら希望を表現した二人

 

「どんなときも私はあなたと共にある」とソラさん(写真左)とコガワさんが日本語と英語で同時に朗読。音の重なりがハーモニーとなってやさしく響いた

 

 

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