2017年5月4日 第18号

日本で開発された脳活性化のための学習療法を用いて、米国の高齢者介護施設で行われた認知症の症状改善に向けた取り組みを記録したドキュメンタリー映画、『僕がジョンと呼ばれるまで』。日本、ニューヨーク、ロサンゼルス、クリーブランドで劇場公開され、観た人に感動と希望を与えた映画だ。同映画がカナダでも上映されることになったが、公開を前に4月22日、在バンクーバー日本国総領事館で特別上映会が開催された。

 

在バンクーバー日本国総領事館領事・職員と「バンクーバー僕ジョン実行委員会」メンバーとボランティアの集合写真。松田茂領事 (下段右から2人目)、中津川貴領事 (上段右から2人目)、実行委員長・ガーリック康子さん(上段右から四人目)他

 

 日本ではいずれ65歳以上の高齢者の4人から5人に一人が発症するとされている認知症。カナダや日本のみならず、世界中、特に先進国で大きな社会問題となっている。その認知症の症状改善に取り組む様子を記録したドキュメンタリー映画が『僕がジョンと呼ばれるまで』。4月22日、在バンクーバー日本国総領事館で開催された特別上映会に集まったのは、グレーターバンクーバーのヘルスケア関係者を中心に約50人だ。

 同映画のプロデューサー、仙台放送の太田茂さんは、上映会参加者へのビデオレターで、「これまで認知症を描いた作品では、ほとんどは症状がよくならず終わっていくのが、この作品では大きな改善まで達成しています」「長年、絶望の病と捉えられてきた認知症が、今、治すことができるものになりつつあります。映画がアルツハイマー病を考える大きなきっかけになったらと思います」と語った。

 映画上映後は、参加者がコメントや感想を語る機会も設けられた。日加ヘルスケア協会の佐久間アンダーソン雅子さんは、「認知症軽減のための学習療法では、映画で描かれていたように、決まった時に同じ長さで行うこと、毎日定期的に行うことが大切で、それにより認知力が上がっていくことがあります」と説明した。人との交流を行うことで出てくる『ハッピー・ホルモン』が大切で、脳トレーニング同様の効果が期待できるという。

 隣組でイキイキプログラムや脳トレ、タブレットを使ったゲームなど、よく似た試みを行っているという、隣組の理事、デビッド岩浅さんは、「映画を観て、これらの試みを引き続いて、もっと行っていかなければならない、さらに拡大していかなければならないという思いを強く持ちました」と感想を述べた。映画が励ましになったそうだ。

 Personalized Dementia Solution Inc. のカレン・タイレル(Karen Tyrell)さんは、目的をもつことや、みんなでいろいろなことをすることが認知症改善に大切だと語った。カレンさんは、認知症は病気ではなく、多様な症状の集まりだという。認知症には様々なタイプがあり、どのタイプと向き合っているのかを知ることが症状改善に結びつくこともあるとして、まず認知症のタイプを知ることを訴えた。

 そのほか、映画では薬に頼らず、症状が改善していく様子が描かれていたが、アルツハイマーを患うという男性は、「僕は薬をのんでいなかったら、今頃、死んでいると思う」として、薬の有効性についても発言があった。

 『僕がジョンと呼ばれるまで』は6月25日(日)14時半からVancity Theatreで一般上映される。

 

『僕がジョンと呼ばれるまで』あらすじ

 米国の介護施設で日本の脳活性化プログラムに参加した高齢者やその家族、スタッフを追った映画。明るく社交的で、ボランティア活動も積極的に行っていたエブリンさんは、認知症を発症してからは、モノが見つからないと、誰かが盗ったと言い張るなど、すっかり人が変わってしまった。息子のデールさんは「頭で分かっていても、心がついていかない」、「母が母であった頃に戻ってほしい」と悲痛な顔で語る。

 当初、自分の名前も書けず、集中力もなく、他人とうまく会話もできなかったエブリンさんは、脳トレの簡単な数字並べもうまくできなかった。それが、1カ月、2カ月と続けるうちに、少しずつ数字並べができるようになっていく。それだけではない。着替えができるようになる、自分でトイレに行けるようになると様々な変化が現れる。6カ月の撮影期間が終わるころには、オシャレになり、家族と外出できるようになったり、他の入居者の世話までできるようになる。

 入居者だけでない。スタッフ側も入居者にもっと目が届くようになり、施設の雰囲気が変わっていく。根本的な治療法のない認知症に対する不安に希望の光をもたらす映画だ。

公式サイト: http://www.bokujohn.jp

 

2013年 アメリカ・ドキュメンタリー映画祭 観客賞(外国映画)
2013年 ロサンゼルス・ムービー・アワード 奨励賞
2013年 ベルリン国際フィルム・アワード 特別選考賞
2013年 クリーブランド国際映画祭 ローカル・ヒーローズ部門/女性監督 部門ノミネート
2014年 ベルギー国際健康映画祭 高齢者福祉部門ノミネート
2014年 アカデミー賞 長編ドキュメンタリー部門エントリー

(取材 西川 桂子)

 

 

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