普通に存在するものの中に
大型小型の製作道具がずらりと並ぶアトリエに、制作途中の滝を昇る鯉の作品が置かれている。どこを深くどこを浅く彫れば、水しぶきが飛び散るように見えるか。限られた木の板の厚みの中で、陰影の変化によって思い描いた動きを表現する。
創作活動で大切にしている事は、「自分の内面をいかに作品に表現していくか」。身の回りにある何気ないものや、自然の中から得られるヒントを自分に取り込み、日々共に生かされている感謝の気持ちを込めて制作に当たる。そうした作品が、人の心に安らぎや感動を与える事ができればと、活動を続けている。「作品を通して人と人がつながっていく、ご縁の大切さ、不思議さを実感しています」。
3人の子供の父親でもある河野さんが、家庭を大事に思う気持ちは作品の端々に表れている。妻の綾子さんが妊娠中に制作した高さ150センチの大きな卵『expecting』、2つの洋ナシがもたれあうブロンズ作品『a ‘Pear’ in love』(写真3)。階段の手すりの柱に掘り込んだフクロウの作品(写真2)は目元が末っ子のカレンちゃんにそっくりだ。

 

カナダで制作すること
ドアや柱、マントルピースに刻まれた河野さんの作品が、暮らす人や来客の気持ちを和ませると、その評判が思わぬところにまで広がっていく。バンクーバー市警察から依頼された紋章の置物(写真4)の納品時には、市警察長官が河野夫妻を招いてパーティを開いてくれた。
北米で制作していて強く感じるのは、「アーティストへの寛大なリスペクトが人々の中に存在する事」。「アーティストは自由に泳ぐ方がいいものができるから」と顧客は途中で口出しすることなく、制作を任せてくれる。若手アーティストたちにとって、比較的羽ばたきやすい環境があるのだという。
「今ある環境のなかでベストを尽くす事が、自分にできる事であり、継続したい事」。温厚さの中に秘めたパッションが、つねに自分を挑戦に駆り立てている。

 

河野守行(こうの・もりゆき)さん プロフィール
奈良県育ち。1994年からカナダに。もともとはログハウスの制作が本業で、柱を飾るための彫刻がスタートだった。顧客からの手ごたえを得て、彫刻一本に。北米のギャラリー、ログハウス会社、ドア会社をはじめ、日本・ヨーロッパ諸国・南米へ、野生動物などの作品の注文制作を行っている。BC州の地方自治体、民間企業、個人に納入実績あり。MK carving and sculpting 1-604-504-7235

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http://www.mkono.net/

 

(取材:平野香利)

 

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