アリゾナの風景写真で2011年カナダとパリのコンクールに入賞
カナダのプロ写真家協会であるProfessional Photographers of Canada(PPOC)が、今年4月20日にバンフで開催したコンクール「National Image Competition of PPOC」に今泉さんの作品4点が入賞。先駆けて3月に行われたBC州プロ写真家協会(PPOC-BC)においてはファインアート部門で最優秀賞を獲得した。
同時期にパリの写真コンクール「PX3 PRIX DE LA PHOTOGRAPHIE PARIS」にも応募した今泉さんは、審査を経て入選を得た今年6月、さらに 「PEOPLE’S CHOICE AWARD」のNATURE-PRO部門で「リスナー」と題した作品が2位、「セレニティ」が3位に輝いた。

 

アリゾナ・アンテロープキャニオンの自然の造形が語りかけるメッセージを
入賞作品はいずれも渓谷に5日間浸って撮影した写真。PPOC-BCで最優秀作品に選ばれた「セレニティ」は、「テーマがよく表現され、砂の音が聞こえてくるようなすぐれた作品」と評され、「構図と白黒のトーンのよさ、画像のシャープさ」の点でも高い評価を受けた。ダイナミックな地形の中にある繊細で幻想的な風景を写し取ったこの作品は、写真の深遠な表現の可能性を見る者に示唆してくれる。
撮影時の思いについて今泉さんはこう語る。「自然の美しい造形に惹かれてカメラを向けるうちに、その美しい地形が恐ろしい鉄砲水で作られたものとわかり、岩と会話するようになって、岩が自分たちの身を削られる歴史から今の美しい形状になったことを私たちに訴えてくれているような気持ちで撮り進みました。現在の美しい岩肌の模様の背景に、<水との格闘>という大変な経験があったこと、そのことは我々の生きている世界にも言えるような気がします」。

写真展では津波直後の気仙沼の写真も展示
6月30日のレセプションでは、開会時に伊藤総領事がチャリティ写真展の開催に感謝の言葉を述べ、今泉さんが来場者への感謝の意と、被災地への継続的な支援の大切さを感じていることを述べた。
展示作品への感想を来場者に聞くと、今泉さん主催の写真教室の受講生の一人、山崎勝通さんは「先生の写真は芸術」と話してくれた。
本写真展では今泉さんの依頼で、気仙沼で被災した梅津覚太郎さん夫妻撮影・提供の気仙沼での津波直後の写真も数々展示された。大きな写真を通じて見る被災地の光景は、津波の破壊力のすさまじさを見る者に強く訴えていた。
このチャリティ写真展開催には「今までに例を見ない大災害の復興には相当時間がかかる。被災地の皆さんの復興の決意がくじけずに、もとの生活が戻るまで強く持ち続けてもらうためにも我々も長く時間をかけて支援し続け、心を寄せて応援していなくてはならないと思う」という今泉さんの思いがある。
展示会での作品販売の収益やドネーションは、すでに義援金としてカナダ赤十字の他に30万円が気仙沼市に直接送られ、日本の基幹産業である水産業支援に直接“今”役立てられる。
話を聞くほどに、水で身を削られ、深みのある美を生み出したアリゾナの光景と、被災地の人々の心の姿が記者の中で重なっていった。


今泉慶子さんプロフィール:東京都出身、お茶の水女子大学卒後、日本航空に就職。同社の今泉周治氏と結婚し、カナダ・メキシコ・アラブ首長国連邦駐在を経験。現在バンクーバーに暮らす。2004年当地写真学校プロ養成コース卒業後、スタジオ設立。BC州およびカナダプロ写真家協会会員。天皇皇后両陛下カナダご訪問随行撮影などを経て現在に至る。http://keikophotography.com

 

(取材:平野香利)

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