2016年9月22日 第39号

 

ウォン・ララ

 

 ウォン・ララ(Lara Wong)は、バンクーバーで中国系の弁護士の家庭に育ちました。子供の頃から勉強や習いごとは得意でありませんでしたが、音楽が好きで5歳でピアノ、そして数年後にフルートを始めました。意外にも子供の頃から始めていたミュージック・レッスンが、フラメンコとの出会いのきっかけになりました。ある日ピアノの先生から渡されたグラナドスのスペイン舞曲が、思いがけなく彼女の人生を変える大きな曲がり角になりました。その後はピアノだけでなくフルートの音楽にも変化が起き、今までのロマンティックで透き通るようなレパートリーから、カルメン組曲で有名なビゼーの他、フォーレ、ゴベールなどの近代フランス作曲家、スペインのロドリーゴや、ジプシー音楽で知られたハンガリーのドップラー等を特に好んで演奏するようになりました。もちろん、フラメンコといえば踊りなしでは考えられません。そのため2年近くフラメンコ教室でも習いましたが、どうしても自分には向いていないことが分かり、悔しさいっぱいで仕方なく諦めました。そのようなことがあったためか、フルートにさらに力を入れるようになり、フルーティストを目指して、カナダで最も有名なモントリオールのマギル大学音楽部のフルート科に入学しました。

 ところが、大学で勉強を続けているうちに、幼い頃から心に秘めていたフラメンコ音楽への思いが再び膨らみ始め、大学2年生のとき思い切って将来の方向を変える決心をしました。当時オーケストラで演奏をしていた時も、自分の出番をひたすらに待ってただ楽譜通りに正確に弾くだけではなく、音楽そのものと一緒にもっと自由にその空間を飛び回りたいと強く感じるようになりました。幸運にも3年度から生徒数がかなり限られていたジャズ部門に転入することができ、今までのクラシックとは全く異なった方向で、ジャズをはじめラテン、フラメンコなどのワールド・ミュージックへと、フルート音楽の可能性を幅広く追求し学ぶ機会があたえられました。 その時になって初めて、ハイスクール時代に無念にも諦めてしまったダンス教室での経験が決して無駄ではなかったということがよく理解できるようになりました。あの時に習ったフラメンコダンスは、その後のララのフルート音楽に強い影響を与えたと共に、音楽性を形作るためになくてはならない経験だったのでした。 そして大学を卒業するか否か、気付いたときはフラメンコの中心地、セビーリャに向かっていました。

 フラメンコはギターと歌い語りに併せて華やかな踊りを披露するスペインの伝統芸能で、18世紀頃、北アフリカの対岸に位置するスペイン南部のアンダルシア地方で生まれました。それは当時その地方に数多く住んでいたジプシーとムーア人(現在のアラブ人)が行き交う文化の中で育まれた芸術で、音楽と舞踊をあわせるという形で実を結んだものでした。グラナダに建てられた世界遺産として知られているアルハンブラ宮殿は、フラメンコ音楽を建築と美術で表現したものといえるでしょう。

 現在のフラメンコ都市セビーリャには、世界的に有名なフラメンコの芸術家が住んでおり、また著名なフラメンコ専門学校があるため、ダンサー、ギタリスト、カンテ(歌手)など、フラメンコ・アーティストを目指して世界中から多くの人々がやってきています。時代の流れと共に現在のフラメンコはフラメンコ・ヌエボとも呼ばれ、伝統的なものに加えて、歌やギターだけでは表現できない、より深みのあるものに変化してきています。アフリカで生まれた野性的なリズムを力強く表現するパーカッション、また、今までには見られなかったより悲しく繊細で複雑な感情の流れを表すためにバイオリンやフルート等の高音域器楽が加わるようになりました。

 2015年にセビーリャで結成されたグループ、「Fin de Fiesta*」はフラメンコに魅せられてセビーリャにやって来た3人のカナダ人アーティストによって作られました。レギュラーは、創立者でダンサーのリア、ギターのデニス、そしてフルートのララで、その他カンテ、パーカッショニストなどが随時加わっています。「Fin de Fiesta」はことし2度目のカナダ縦断ツアーを行いました。ツアーは7月下旬から9月中旬にかけて行われ、BC州から始まって、8月中旬頃に東部に移りました。ことしのバンクーバー公演は、8月にスコシア・ダンスセンターとグランビル・アイランドで行われ、どちらも大好評を得ました。BC州の後はオンタリオ、ケベック州に移り、トロント、モントリオールをはじめとする数多くの都市で演奏活動を続けました。

 カナダ縦断ツアーのあとは、東京に住む祖母に会いに行く予定ですが、10月4日にはセビーリャで出会った日本人のフラメンコアーティストと一緒に、東京でライブショーをする予定です。日本でのライブショーのあとは再びバンクーバーに戻り、バンクーバー・プレイハウスで「ダリワ・フェスティバル」の一連として行われる、モーツァルトの「マジックフルート**」にゲストアーティストとして出演する予定です。このようにして、ララは今までのフルート音楽の常識を超えた活動を始めるようになりました。また、昨年からフルートに加えカンテの分野にも挑戦し始め、もっと広い視野でフラメンコ音楽を知ることによって、より多くの人たちにフラメンコを理解して愛してもらいたいと語っています。夏から初秋にかけて 「Fin de Fiesta」としてカナダで演奏旅行をする他、秋から春頃まではセビーリャでフラメンコフルーティストとして活動しています。その後、4月の末頃から6月にかけて南フランス等で行われるヨーロッパのミュージック・フェスティバルに参加する予定です。昨年度からは、メキシコのリゾート地トゥルームや東京でも活動を始めるようになりました。ララはこれからもフラメンコ音楽の伝道師として、さらにフルート音楽のレルムをよりいっそう広げるために、これからもスペイン、カナダ、日本をはじめとして世界中を広く飛び回ることでしょう。

(投稿 王 由利)

 

*Fin de Fiesta :スペイン語で『祭りの後』。フラメンコショーの終わりに観客もステージに上がり、一緒に踊ったり演奏をしたりすることを意味しており、グループ名はこの言葉に由来している。
http://www.findefiestaflamenco.com/
**マジックフルートは10月15(土)・16(日)7時〜バンクーバー・プレイハウスで
Karen Flamenco Vancouver :: Performance :: Productions

 

 

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