5月21日、バンクーバープレイハウスで、コースタル・シティ・バレエの公演「Swan Lake(白鳥の湖)」がおこなわれた。同バレエ団にとって5回目のシーズンとなる今回、バレエの演目としては最も有名なものの一つである「Swan Lake」を現代的な解釈で展開する。チケットは完売。会場を埋めた観客はモダンテイストでありながら、美しいクラシック作品の世界を残した「Swan Lake」を堪能した。

 

第4幕の白鳥の群舞

 

従来とはひと味違ったストーリーや衣装

 この公演の振り付けを担当したアイリーン・シュナイダーさんは、ドイツのバレエ団でプロとしてキャリアを積んだ後、世界各地で舞台監督や振付師として活躍している。現在ドイツに帰国中とのことで、あいにくこの日は欠席ということだった。

 「Swan Lake」は、全4幕で構成されている。あらすじは従来のものと少し違っていて、通常、悪魔として登場するロットバルトは、ここでは王子ジークフリートの後見人であり、自らの娘であるオディールを王子の結婚相手にしようともくろんでいる。成人となったお祝いのパーティーで疲れ切った王子は、湖のほとりで眠りこんでしまい、夢の中で白鳥オデットに出会い恋に落ちる。母后やロットバルトに決められた相手との結婚を迫られるが、王子は真実の愛を求め、すべてを捨ててオデットのあとを追う。白鳥の衣装は、純白のチュチュに頭にも羽をつけた一般的な「白鳥の湖」でおなじみのものだったが、舞踏会の場面では赤と黒を基調としたモダンなテイストになっているなど、独特なコスチュームも美しい。

 

7人の日本人ダンサーが好演

 白鳥の群舞や、王子とオデットのアダージョといった見どころの多い第2幕では、幻想的な美しい世界が描かれる。たくさんの白鳥が幾何学模様を描くように踊る優雅な場面にはみとれてしまう。また、4羽のCygnets(白鳥のひな)による軽やかなステップの踊りは、日本人ダンサーの奥野景子さん、桂島奈々さん、早田美麗さん、鈴木夢生さんが担当。4人の息が合わないとうまくできない難しい踊りをこなし、観客からも歓声があがっていた。この踊りの部分について、「先生に爪先とか首の位置とかすごく言われ続けて、一番練習しました。(その部分が)終わった時に誰かが『ブラボー』と叫んでくれて、本当は笑っちゃいけないんですけど、なんかみんな半笑いで。『やった!できた!』とすっきりした気持ちでした」と奥野景子さんは話す。この4人と臼井里杏さんは白鳥の群舞、パドトロワ、舞踏会でのイタリアやスペインの踊りなど、さまざまな役で全幕に登場する。

 このシーズンでプロとしてバレエを踊るのが最後という早田美麗さんは、「今後バレエは趣味として続けていくつもりです。これからは前に進もうと思っていて。まだ分からないんですけど、なにか好きなことを見つけてそれをできたらな、と思います」と語った。

 大役オデットを演じた井上桜さんは、「『白鳥の湖』という有名な演目なだけにプレッシャーも大きかったんですが、先生をはじめいろんな方が支えてくださいました。先生は、できないところをできるように指導してくれましたし、友達も『つらいよね』と(気持ちを)分かってくれて、本当に心の支えになりました」と、時折涙ぐみながら語った。「Swan Lake」の公演は、6月10日にサレー・アーツ・センターでもおこなわれる。

(取材 大島 多紀子 / Photo by Miyuki Nakamura)

 

第2幕、王子ジークフリートを演じるディエゴ・ラマーリョさんと、オデット役の井上桜さん

 

白鳥オデットを演じる井上桜さん

 

イタリアン・プリンセスを演じた奥野景子さん(左端)とスパニッシュ・プリンセスの早田美麗さん(右端)

 

王子の友人ベンノを演じたリョウスケ・キクチさんは、ゲストダンサーとして出演

 

公演後のレセプションで。6人の日本人のダンサーたち (左から)臼井里杏さん、桂島菜々さん、奥野景子さん、井上桜さん、早田美麗さん、鈴木夢生さん

 

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