3月21日、昨年に続き、坂戸高等学校のSGH研修生6人と引率の先生2人が、バンクーバー日本語学校へ来校し、研修授業を受講した。この研修は、2014年から文部科学省がすすめる『スーパー・グローバル・ハイスクール(SGH)』の一環で、国際的に活躍できるリーダーの育成を目指すもの。その一校に選抜された坂戸高等学校の研修生6人。それぞれの生徒が自分の課題を持ってやって来て、そこへバンクーバー日本語学校のバイリンガルやマルチリンガルの生徒4人も参加。互いに大きな刺激を受け、熱を帯びたディスカッションをし、友情を深めていき、国際人への第一歩を踏み出した。

 

バンクーバー日本語学校の校歌の書の前で

 

モザイク都市、バンクーバーで学ぶ

 第一部の研修は、バンクーバー日本語学校、八木慶男元理事長の担当で、参加した坂戸高校の生徒それぞれの課題を発表することから始まった。

 「英語、フランス語の公用語だけでなく、いろんな民族の人の継承語の学び方に興味がある」、「移民の人へのカナダの語学教育について知りたい」、「今後、日本へも移民が増えるだろうし、日本語を教える仕事をしたい」、「たとえば、『いただきます』を英語でどう言うのだろう、日本語で普通に使っている言葉が、英語や他の言語で表現できないこともあるのではないだろうか」、「『おもてなし』という言葉の真意は、ホスピタリティで伝わるのだろうか」など、『国際化が進展するなかでの自らの夢』といったテーマに集約でき、早速、活発な議論が始まった。「日本人は、気を使い過ぎの面がある」、「たとえば、僕の父の国のイランでは、お客さまを招いて食事をするとき、大盛りを出す習慣がある。でも、これってお客さまにとって迷惑な面もある」、「日本的『おもてなし』は誤解を招くことがある、ありがた迷惑な場合もある」、「生活習慣や文化のバックボーンの違いが、言葉の意味を正確には伝えられないことがある」、「こうしたことを真剣に勉強すれば、きっと気持ちが伝わるコミュニケーションができるようになるのでは」。いま、日本では人口減少が進むなか、移民受け入れを積極的にすすめるべき、という考えがある一方、はたして、文化の違いを乗り越えて調和をはかっていくことができるだろうか。そんなテーマに現実的に取り組み、発展させている国、それがカナダだ。さまざまな国からの移民を受け入れ、さまざまな文化をそのまま尊重してモザイクのように組み合わせていくことを国是としている。その主要都市バンクーバーの「空気」を肌で感じ、生徒たちの将来に活かしてくれれば幸いだ。

 最後に八木元理事長は、英語をおぼえるには、「Books Smartではなく、Street Smartがコツだ」と教えた。今日の熱い議論の全てに応える言葉だった。

 第二部は、内藤邦彦主任教諭が担当。「五感を研ぎ澄ませてつづった言葉は、かくも豊かに伝わるものだ」、という見本に小泉八雲の『日本の面影』の中の文章を紹介した。

 これは八雲が、初めて日本を訪れたときに書いたもので、読む者の想像力をかきたて、実像に迫る。

 この文章を教材に、内藤主任教諭は、実に巧みに一人ひとりを引き込み、まるで「小泉八雲のように五感を研ぎ澄ませてバンクーバーでの研修をしてください」と語っているようだった。

(取材 笹川 守)

 

玄関前で、全員集合の記念撮影

 

内藤主任教諭の授業風景

 

第一部を担当した八木元理事長

 

第二部担当の内藤主任教諭

 

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