― 大切なのは人と人との信頼関係 ―

2月10日付けで外務省より帰国辞令を受けた在バンクーバー日本国総領事・岡田誠司氏。在任中は当地の行事に積極的に参加し、まさに外交とは人と人との信頼関係が基本であるということを実践した3年間だった。

 

2013年の天皇誕生祝賀レセプションで乾杯する岡田誠司総領事とクリスティー・クラークBC州首相(写真提供:在バンクーバー日本国総領事館)

 

開かれた総領事館を

 2013年1月25日の到着に先立ち、日系合同新年会で、前任地アフガニスタンから岡田氏のメッセージが読み上げられるという親近感あふれるスタートだった。

 着任にあたり掲げた目標のひとつが『開かれた総領事館』。「その人の立場に立って話を聞き気持ちよくお役に立てるよう、領事班一同心がけています」

 総領事館が開館125周年を迎えた2014年、岡田総領事は外務省に残る公文書を調べ、歴史を振り返る6回のフォーラム『二つの歩み』を開催した。

 「外務省に入省し、最初に赴任したカナダで出会った日系人夫妻から、第二次世界大戦中は大変苦労したが、戦後オンタリオ州に進出した日本企業で働けるようになり、日本人として大変うれしかったという話を聞いたことがあります。その時に初めて日系カナダ人の方々の歴史を知りました。長い歴史を振り返り、総領事館が日系社会のためにどういうことをしていたのか、今後どういう仕事をしていくべきかを考えたいと思いました」

 

多文化共生の観点から

 政治面では、バーナビー市に対して、韓国の姉妹都市や現地の韓国系住民らが慰安婦像の設置を提案していることが浮上し、当地の日系カナダ社会に不安を促した。日系住民側が反対署名を市に提出し公園管理当局に反対理由を説明するなどした結果、バーナビー市は『多文化共生』という観点から得策でないとのコリガン市長の判断があり、バーナビー市の公共の地に今後このような像が設置されることはないとの返答を受けた。

 「ここにいる日系の人たちが、住んでいる人たちの目線でまとまってひとつの声をあげたということが大きな要因だったと思います。基本は、違う文化背景を持った人たちが歴史を非難するのではなく、前向きに対応していくことだと思います」

 

経済促進に向けて

 BC州では天然ガスの輸出を検討してきたが、この3年間に進展は見られず、州政府から連邦政府レベルでの検討段階となっている。

 「総領事館ができることは、民間企業と政府の間での橋渡しです。セミナーなどの機会を提供し、促進に向けてお手伝いすることだと思っています」

 

文化紹介

 「バンクーバーには琴、尺八、華道、茶道、詩吟、日本舞踊、太鼓、ギター、フルート、ピアノなど様々な分野で活躍する方たちがいて、そういう意味で文化紹介をするのには非常に恵まれた都市だと思います。日本の演奏家が当地の演奏家と共演したり、日本の能楽師がオペラを上演する企画など、日本から招へいしたアーティストがバンクーバーでつながりを持っていくことは素晴らしいですね」

 「3年間はあっという間でした。外交官の仕事の成果というのは目に見えないものがありますが、仕事によって得た資産は 『人とのつながり』だと思っています。ことし私が掲げた抱負は『大信不約』。信頼関係があれば約束はいらない、ということです。どんな仕事をしても基本は一緒です。きちんとした人間関係、人と人との信頼関係を維持していきたいと思っています」

(取材 ルイーズ阿久沢)

 

2014年、総領事館開館125周年記念フォーラム『二つの歩み』で初代在バンクーバー領事について説明する岡田誠司総領事

 

2014年、公邸に咲く桜の木の下で薪能を開催。金春流能楽師の山井綱雄氏と岡田誠司総領事・寧子夫妻

 

2015年、総領事館が招待した津軽三味線奏者、山口ひろし氏が日系祭りにゲスト出演し、バンクーバー在住ギタリストの中島有二郎さん、岡田誠司総領事と共演

 

System.String[]

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。