バンクーバー美術館史上最大を誇る展示会 “MashUp: The Birth of Modern Culture” が2月20日開幕した。1階から4階までの全館を使い、芸術家、映画製作者からデザイナーまでさまざまな分野から156人が参加し、371作品を展示。「マッシュアップ:モダン文化の誕生」をテーマに、その時代に生まれたモダン文化の象徴を紹介する。中にはパブロ・ピカソやアンディ・ウォーホルなど誰もが知る著名な芸術家の作品も展示されている。 日本人としては「プライウッドシティ」と題した作品で宇治野宗輝氏が参加。デジタル時代到来前の日本の大量生産・大量消費時代の象徴的電子機器を利用した音楽バンド「ザ・ローテーターズ」を紹介している。

 

MashUpの最初の作品。1階の入り口から吹き抜けを使っている。Barbara Kruger作、Untitled(SmashUp)

 

1980年代のポップカルチャーを表現する

 「プライウッドシティ」とは1970年、80年代のポップカルチャー、いわゆる大衆文化を表現したものだという。プライウッドとはべニヤ板のこと。美術品を運ぶときに使われるべニヤ板でできた箱を材料に使い、会場を町全体に見立て、家やビルを建てる。そこに20世紀近代生活を象徴する工業製品、今回はミキサーや掃除機、ドリル、エレキギターを配置する。そうしてでき上がったのがプライウッドシティ。我々がその町に一歩足を踏み入れると、プレイウッドでできた小さな家屋を上から見下ろす感じになり、まるで自分がウルトラマンのセットに入ったかのような雰囲気を醸し出している。ウルトラマンもまた70年、80年代を代表する日本のポップカルチャーだ。

 デジタル文化到来前のアナログ全盛期時代を、視覚で、音で、空間で、記憶で表現する。「べニヤ板でできている箱も、町に見立てたということも、この展覧会もそうなんですけど、20世紀の我々の近代化の生活で、全部工業製品を使って生きているような。エレキギターも、工場で20世紀に作られた大量生産の楽器ですよね。そういうものと家電。僕は『物質文明がリサーチ』ですと言ったりするんですけど」 と宇治野さん。エレキギターに取り付けられた家電製品は、それぞれ家電的な雑音を出しながらうまく音楽性を持たせるように繋がっている。

 「1980年代から機械の音で世界中の人が踊るようになるんですよね」と宇治野さん。「しかもドラムだけの音楽ですよ。日本の教育で音楽というのは、リズムとハーモニー、メロディがあって音楽って習ったんだけど、今はリズムだけ。一個あれば音楽って世の中になっていて、ドラムだけの音楽で世界中が踊っている」。プライウッドシティでは、べニヤ板に乗った20世紀を代表する家電製品は、ドラムのようなリズムを作り出しながら、ダンスミュージックを奏でている。

 このシティは時にライブパフォーマンス会場となる。その時、これらの家電製品楽器は宇治野さんのバンド「ザ・ローテーターズ」のバンドメンバーとなる。2月20日には、ここで宇治野&ザ・ローテーターズのライブパフォーマンスも披露された。

 20世紀の高度成長時代に日本に怒涛のように流れ込んできたアメリカ文化。家電、音楽、そしてアートそのものも日本にとっては輸入文化で、その影響をリアルタイムで受けた日本人としてそれらを消化し、ポップアートとして表現したプライウッドシティ。今後もデジタルに染まることなく、80年代ポップアートを追及する。

 

マッシュアップな展示会にハッピー

 「展覧会もすごいちゃんとしてて。こういった20世紀のモダンカルチャー(近代文化の始まり)、マルセル・デュシャンから始まって、(自分の作品が)エンディングみたいなところにあって、すごいハッピーですよ。そういったコンテクストで日本の人はみることはないので」と宇治野さんは今回の展示会の感想を語った。「音楽とアートとシアターとエレクトロニクスとスカルプチャーとみたいな、それ自体が僕の中でマッシュアップですから、とてもこれはハッピーですね」と。

 日本でポップカルチャーというとどこか幼稚なものと捉えられがち。しかし、今回のバンクーバー美術館のこの展示会は、20世紀初めから今までの100年以上を、その時代を代表するポップカルチャーの作品が年代順に4階から展示されている。その中に、ピカソもウォーホールも含まれている。そして、最後に近い所で宇治野さんの作品に出合う。

 今回、宇治野さんを担当したキュレーターの原万希子さんは、「話を聞いた時に宇治野さんしかいないと思った」と笑った。「宇治野さんの作品は、20世紀のモダンカルチャーの文脈がちゃんと入ってるって私は思ってて。だけど、日本ではそういうふうなコンテクストには絶対おかれない」。今回バンクーバーでの展示はとても合っていると語った。

 宇治野さんは、「いろんな要素がすごく絡み合っているものなので、さっき言ったような機械の音でダンスするダンスミュージックをリファレンスしているものなので、パーティーのDJがやっているように、遠くでDJがいけてるな、ダサいなって思っていてもいいし、何かこう機械が大好きな人は近づいてみても楽しいでしょうし、電気がピカピカして素敵っていう女性も歓迎しますね。パーティーバンドみたいなものって思ってもらえるといいですね」と、いろんな角度から楽しんでほしいと語った。

宇治野宗輝さんウェブサイト www.the-rotators.com

 

 

バンクーバー美術館

“MashUp: The Birth of Modern Culture”

Vancouver Art Gallery 2月20日から6月12日まで                

(取材 三島直美)

 

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詳細はパート1、5ページの応募用紙をご覧ください。

 

宇治野さんとザ・ローテーターズ心臓部。鉛筆が刺されたレコード盤を回し、リズムを作っている。全ての家電製品は連動。作品材料は現地で調達。今回はドイツから運ばれて来たものとカナダのものとの融合作品

 

宇治野さん(左)と原さん。以前、原さんがセンターAでキュレーターをしていた頃にも宇治野作品の展示を手掛けたことがある

 

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