2008年9月17日 第38号 掲載


西成智恵美氏

JTBIカナダ取締役インバウンド支店長、

西成智恵美(にしなりちえみ)氏



スカイトレインのカナダ・ライン開通で交通の便が良くなり、賑わうリッチモンドのア バディーン・センター。そこからわずか1ブロックという魅力的な場所にあるのがJTBIのオフィスだ。西成智恵美氏は、2009年4月1日にJTBIカナ ダ取締役インバウンド支店長に着任。この場所で日々、旅行業界の変化を分析し、ビジネス領域の多様化を進めている。

今、市場の多様化が必要になっている
伝統的に旅行会社のビジネスの領域は、パッケージツアー、団体旅行(企業顧客へのインセンティブグループなど)、そして修学旅行だ。しかしそれだけで は、 テロなどが起こった時、ビジネスが大きな打撃を受けてしまう。また景気が悪くなった時、人々が最初に控えるのはレジャー。特に日本からカナダへの旅行な ど、長距離の旅行はしなくなる。景気後退に伴って海外旅行の市場が縮小する中、今までと同じパッケージツアーを提供するだけではビジネスは伸びない。消費 者が本当に求めているのは、どんな旅行なのか。それを探求し、新しいビジネスチャンスを模索することが西成氏の仕事の一つだ。

どのような旅行の需要が増加しているのか
西成氏は、顧客のニーズを分析する中で、二つの大きな変化を感じている。一つは、消費者はもはや一般的な旅行には満足しないということ。お決まりのナイ アガラ、ロッキー山脈、バンクーバーのパッケージツアーは、もう飽きられてしまっている。旅行慣れしている顧客が求めているのは、自分の趣味に合わせて選 ぶことができる旅行。例えば、今までと同じ場所であっても、もっとハイキングに特化したものや、野生動物を見ることに特化したもの。顧客がそれぞれの好み で、旅行の形態を選ぶ時代になっている。

二つ目は、教育旅行の需要の変化。これまでは修学旅行や、短期間の語学研修が主要なビジネスだった。カナダは安全で、英語が聞き取りやすく、多民族社会 であるため日本人の居心地も良い。多くの日本人にとって理想的な教育旅行の行き先となってきた。しかし今、顧客は英語だけでは満足しなくなっている。西成 氏はキャリア教育分野に着目し、消費者が求めている旅行の実現のために日々努力しているという。

世界同時不況と新型インフルエンザも、今後の方針を考える良い機会
昨年からの世界的な不況と新型インフルエンザの影響で、売り上げ単価は落ちている。現在は 少し戻ってきているとはいえ、昨年の同じ時期と比較するとまだ低い状態だ。それでも西成氏は悲観的にはならず、常に前向き。「何かがあった時は仕方がな い。その中でどうしていくのかを考える良い機会です」と語る。

JTBIのビジネスは多岐にわたる。このグループの中には、三つの大きな 会社があり、それぞれ異なるビジネス領域を持つ。まずJTBカナダは、JTBの顧客を担当。TPIは、中国やインドなど日本以外からの顧客を担当する。そ してツアーランドトラベルは、車両やガイドなどの管理をする。さまざまなビジネス領域を持つことで、突発的な状況による影響を緩和することができるのが、 JTBIの強みだ。

旅行業はサービス業。旅行の需要が減少している時だからこそ、顧客からのフィードバックをもとにカスタマーサービスを改善し続けることが非常に重要だ。アンケートの結果は必ず毎月評価し、日本でもカナダでも、顧客に満足してもらうことを最重要課題としている。

ストレスをコントロールすることがキーポイント
西成氏がJTBIカナダ取締役インバウンド支店長に着任したのは、旅行業界全体にとって非常に困難な時期。しかし「辞めたいと思うことはありますか?」 との質問には、「全然ないです」と笑顔で語ってくれた。1990年に来加した時から、旅行業界でさまざまな苦労をしてきた。その中で学んだことは、ストレ スをコントロールすること。できるだけ個人感情を絡めない。どこにいても苦労はあるのだから、焦らない。状況を把握、分析し、どう解決するかを考えること が重要。家庭に仕事は持ち込まず、帰宅後はワインを飲んでリラックスするそうだ。

(取材 船山祐衣)




西成智恵美氏 プロフィール

立教大学文学部卒業。(株)昭和アルミニウム貿易課勤務を 経て、1985年旅行業界に転職。オセアニアのツアーオペレーター・シルバーファーンホリデイズ東京営業支店に入社し、90年同社のカナダ支店オープニン グスタッフとして来加。2003年よりJTBIカナダグループ社に移り、09年4月1日よりJTBIカナダ取締役インバウンド支店長。

 

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