1月29日、30日、31日の3日間にわたり、リッチモンド・オリンピック・オーバル競技場で2016年の空手道カナダ全国チャンピオン大会が開催された。カナダ各州の代表約400人が集い、チャンピオンの座を目指し日頃の鍛錬の成果を披露した。 

 

凄まじい気合が会場にこだまする

 

 この全国大会は、今年で41回目。毎年、全国の各州で開催されているが、ここ4年間はリッチモンド市で連続開催。その最後の年とあってリッチモンド市は、いつも以上の協力体制でバックアップして大会を盛り上げていた。また、日本の伝統武道が、今やインターナショナルスポーツになっている空手道であり、2020年の東京オリンピックの競技種目にもノミネートされていることを、在バンクーバー日本国総領事館・岡田誠司総領事が、開会のあいさつのなかで紹介していた。カナダの空手道、始まりは日系人。日本文化、礼節を教えてきた。 

  1964年、鶴岡政巳さんほか4人の空手指導者によって、「空手カナダ」National Karate Association(NKA)が設立された。鶴岡政巳さんは、カナダ空手道界の『父』と呼ばれ、カナダ全州をまとめ、組織を作り上げた。1975年に空手道カナダ全国チャンピオン大会の第1回大会が開催され、今年、41回大会へと連綿と続けられてきた。ちなみに、バンクーバー糸東流空手道正晃会の佐藤義晃師範は、第2回空手道カナダ全国大会からBC州チームのコーチ、そして大会役員をつとめ、発展に寄与してきた。また、リッチモンド市スティーブストン剛柔流空手道打揚会の打揚猛師範も同様で、競技レベルを高めてきた。今回の大会でも「形」の男子シニア部で優勝した打揚寿英選手を輩出。打揚選手は、16歳で初優勝。今回で14回目のチャンピオンとなった。カナダ選手としては、はじめての世界空手選手権メダリストであり、Jr.パンアメリカン大会でも優勝した選手だ。   

『スポーツ空手』を推進する 空手カナダ(NKA)

 空手をスポーツの競技種目の一つとして位置づけ、安全性や勝敗ポイントの改善のために空手カナダ(NKA)もつとめている。「組手」競技のときには、足甲サポーター、スネサポーター、ボディプロテクター、マウスピース、拳サポーターを着用することが早くから行われ、安全性を高めている。勝敗を見極める主審と4人の副審でジャッジする。さらに、ビデオ判定も導入。また、それぞれの選手のコーチも異議を申し立てることができ、ビデオ画面で再確認をするなど、公平性を保っている。まさしく、空手もフェアプレーを信条とするスポーツとして定着している。そして、他のスポーツと同様に健康な体力、精神を増進するためにさらに裾野を広げる改革がされていくだろう。 

 一方、空手道には、勝ち負けだけでは測り得ない、日本武道に共通する精神性の奥深さがある。スポーツ化が進むと、勝ち負けだけに偏重することになるのではないか、という見方もある。このことについて、空手オンタリオの指導者レット・プラビラル・プラビブハバンさんは、「日頃の練習のなかで、礼儀作法や目上の人を敬うこと、優しさ、忍耐など、空手の伝統的な精神をみっちり教えています。もちろん、試合でも所作や気合などが厳しくチェックされています」と、競技性と伝統的な精神性の両立を自信を持って語っていた。

   約400人が参加したこの大試合にかかわらずスムースな運営、キビキビとした試合運び、観客や来賓に対する空手着を着た選手の何気ない会釈、礼儀を目の当たりにすると、これまでにない新たなスポーツ文化がインターナショナルな広がりを見せているようだ。             

(取材 笹川 守)

 

熱戦が繰り広げられた大会会場

 

チーム優勝のBCチーム(左から)ジョン・サワル、打揚寿英 、ケネス・リー、竹内勢伊八選手(写真:スティーブストン空手)

 

4回目の優勝をした打揚寿英選手(写真:スティーブストン空手)

 

(後列右端)空手オンタリオ代表のレット・プラビラル・プラブハバンさん 

 

(左)クレッグ・ボッキー空手カナダ会長(右)糸東流空手道正晃会佐藤義晃師範

 

開会式で挨拶する在バンクーバー日本国総領事館岡田誠司総領事

 

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