厳しい経済状況下も日本からの旅行客は確実に増加

ミネラル・エクスプロレーション・ラウンドアップ2016が1月25日から28日までバンクーバー市で開催された。世界各国から天然資源産業に関わる企業や研究者、政府関係者、投資関係者などが集まり、同産業の現状と将来を話し合った。 この会議に参加していたノースウエスト準州(NWT)ボブ・マックリード準州首相が26日メディアに応じ、NWTの天然資源産業の現状について語った。 

 

レセプションでスピーチするマックリード準州首相

 

NWT鉱山業の魅力を強調

 NWTは天然資源が豊富なことで知られている。最も有名なのはダイアモンドで、世界第3位の生産量を誇るという。その他にも、金、亜鉛、ニッケル、石油、天然ガスなど種類も量も豊富で、鉱山業は準州の主要産業となっている。

 マックリード準州首相によると、鉱山業が準州のGDP(国内総生産)に占める割合は約40パーセント。「政府としても今後も同産業を支援していく」と、26日に行われた同会議に出席した準州関係者のレセプションで語った。

 報告書によれば、2014年の鉱石とダイアモンドの産出による価値の合計は18億9千万ドル。鉱山産業の成功は、準州経済を潤し、さまざまな分野に恩恵を与えていると強調した。

 しかし、現在は厳しい局面に立たされていることも確かとマックリード準州首相。原油価格の急落による影響は大きく、「世界の天然資源産業が直面している問題を準州も共有している」と語り、政府と産業関係者が協力して、この局面を乗り切ることが必要と語った。

 「将来的には大きなチャンスが待ち受けていると期待したい」と準州首相。「鉱山埋蔵量、技術、準州政府が三位一体となってこの産業を発展させている例は他にはない」と主張し、先住民族コミュニティとも良好な協力関係を保っていることも強調しながら、「国内の他州の手本となるのではないかと思っている」と語った。

 今後は自由党新政権との協力が不可欠で、しっかりと話し合いを重ねていきたいとも語った。

 

日本との関係

 日本とは天然資源産業と観光業で非常にいい関係にあると語った。天然資源産業では、JOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)と協力して、ボフォート海でのメタンハイドレード開発を行っているという。

 マックリード準州首相自身、日本には何度か貿易派遣団として訪日したことがある。その時には、天然資源産業のみならず、観光業、宇宙開発産業でも、力を入れていることをアピールしたと語った。

 観光業では、もちろん人気のオーロラ鑑賞。昨年は約1万7千人が日本からNWTを訪れ、今年は2万人を目指す。日本に同準州の事務所はないが、オーロラ鑑賞観光に関しては、バンクーバーもしくは日本の旅行業者を通して、NWTのオーロラ鑑賞を宣伝していると語った。

 NWTは数あるオーロラ鑑賞地の中でも、非常に条件がいいとされている。日本から同準州州都イエローナイフへの直行便はないが、バンクーバーもしくはカルガリー経由で行けると語った。

 その他には、ダイアモンドと毛皮の販売促進のため、ファッションショーに参加したことも。「その時の反応はとても良かった」と振り返った。

 

厳しい天然資源産業の現状

 鉱山産業関係者が集まったレセプションでは、準州政府も支援を惜しまず、将来に期待しながら、現在の状況を乗り切るよう努力することを語ったが、メディアの質問に対しては、現実は非常に厳しいことを明かした。

 原油価格が急落し、天然ガスの価格も下落。すでに政府から承認されていた天然ガス用マッケンジーバリーパイプライン建設も、一時停止を余儀なくされている。天然ガス価格があまりにも下落し、建設に関し現時点では現実的ではないとの判断が下されたという。

 日本政府はカナダからの天然ガス輸出を前保守党政権時から要請しているが、NWTもこのような現状となっている。その他にも、石油天然ガス採掘プロジェクトが次々と中止となったとも語った。マックリード準州首相は、「今後10年間は石油天然ガスの価格は戻らないだろう。これでも楽観的な見方だと思う」と厳しい現状を口にした。

 天然資源産業が主要産業の同準州にとっても厳しい状況が続く。「今後の予算案では苦しい選択肢を迫られそうだ」と語った。

(取材 三島直美)

 

 

会場の様子。鉱山関係者や先住民族の人達が多く集まっていた

 

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