「家選びの落とし穴・得する改装セミナー」

日系文化センター・博物館で10月21日、建友会によるセミナー「家選びの落とし穴・得する改装セミナー」が開催された。家、すなわち住まいは、生活の基本「衣食住」のひとつを担う大切な要素だ。住宅購入の際にはホームインスペクター、リアルター、モーゲージアドバイザーの存在は欠かせない。セミナーでは、専門家から家選び、改築に関するアドバイスを聞くことができるということで、不動産購入や改築を検討中の人を中心に約60人が集まった。

 

拓殖大学で学び、日本への住宅輸出業にも関わってきたこともあり、日本語堪能なBarr氏はライセンスを持つプロのホームインスペクター

 

 セミナーはホームインスペクターによる家選びのポイント、落とし穴に関する講演と、ホームインスペクター、リアルター、モーゲージアドバイザーという異なる立場にある専門家のパネルディスカッションの二部構成だ。

 プレゼンテーションを行ったBarr氏は「家の敵は水」と述べ、「雨から家を守るためにも、軒がちゃんと出ている家が良い」とアドバイスした。結露によるカビについては、呼吸器系疾患を引き起こす可能性があることから、有害なカビか調べることもあるのだが、調査にはとても費用がかかるため、業者を使って洗うか、改築してしまうほうが安上がりになることが多いという。

 結露対策として重要なものの一つは換気口だ。購入を考えている家のどこに換気口があるか、また空気の入口と出口が確保されているか確認したい。

 さらに手軽に水の浸入を調べることができる場所として、トイレの便器と床の継ぎ目部分を指摘。「家に帰ったら、便器と床の継ぎ目部分を踏んでみてください。水が入っているようなら床が柔らかいので分かります」

 Barr氏は購入を検討している家について、注意すべきポイントにも触れ、「Heat Recovery Ventilation(HRV)を使っている家は『良い家』と言えます」と語った。HRVは新鮮な空気を送り込み、汚れた空気を排出する熱交換換気システムで、常に室内空気環境を良好に保つ。

 一方、アスベストの入っている『Vermiculite Insulation』がある場合、購入時に家の価格を安くしてもらえる可能性もあるそうだ。「通常のVermiculite素材の断熱材に問題はありませんが、一種のブランドのVermiculite Insulationでアスベストを含む商品がありますので、注意が必要です」

 配管で『Polybutylene Plumbing』が使われている場合も、コネクタ(接続部)の問題も発生していることから注意したい。

 続いて第二部は、ホームインスペクター、リアルター、モーゲージアドバイザーによるパネルディスカッションだ。

 「初めて住宅を購入するバイヤーAさんが450K〜500Kの予算で物件を探している。選択肢は1.イエールタウンのコンドミニアムの4階の部屋、2.バーナビーのタウンハウス、3.コキットラムの一軒家」。「現在、ダウンタウンの1BRに住んでいるEさん。予算600K〜650Kでフェアビューで2軒目のコンドミニアムを探している。1.1973年建築の1階、2.1991年建築の2階、3.2008年建築の6階」というように事例を用いて、どの物件を勧めるか、注意点は何かなど的確なアドバイスを行った。パネリストは、ホームインスペクターのConall Barr氏に、モーゲージアドバイザーの浜野 ハイディー氏(The Mortgage Group)、そしてリアルター、中谷 陽里氏(Oak West Realty)。

 「1980年から90年代に建てられたコンドミニアム、いわゆる『リーキー・コンド(Leaky Condo)』については、外壁の修復を完了していないとモーゲージが昨今、出難い状況になっております。住宅街にある一軒家の場合はモーゲージは問題はありませんが、コマーシャルエリアの商業物件に混じって1軒か2軒建っているような物件は融資が難しい状況です。同様にガソリンスタンドやクリーニング店に近い物件も、有害物質の土壌汚染問題の可能性があるので要注意。融資を受けるのが難しい場合もあります」(浜野氏)

 「一般的に売るためのリフォームは無駄で、大抵の場合、費やした金額分、高く売れるということはありません。するべきことは、掃除と荷物を少なくしてスッキリ見せる、そして壊れているところは修理することです」(中谷氏)

 「コンドミニアムの場合、1973年建築だと配線、91年はリーキーコンドの問題がありました。2008年建築だと、これらの問題の心配はありません」(Barr氏)

 このように、それぞれ異なった立場、視点から話を聞くことができた。

 

 建友会は、グレーターバンクーバーとその近郊で活動する建築・建設及び周辺産業の関係者のコミュニティだ。現在、会員は約55名。2015年度は毎月1回のペースでイベント(会員向けの勉強会、共催イベント、建友会主催イベントなど)を行なっている。

ウェブサイト: http://kenyukai.ca/

(取材 西川桂子)

 

Barr氏がホームインスペクションの際に使う道具の一つ、赤外線カメラで会場を見る参加者

的確なアドバイスが飛び交ったパネルディスカッション

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