FIFA女子ワールドカップ2015カナダ大会記者会見

 

「今ワールドカップは歴代最高の大会となった」とFIFA関係者は記者会見で繰り返した。7月3日、決勝戦の2日前にバンクーバー市内のホテルで行われた今大会を総括する記者会見。出席したリディア・セケラFIFA女子委員長、タチアナ・ヘンニFIFA女子部長、ヴィクター・モンタグリアーニ大会委員長、ピーター・モントポリ大会CEOは、口を揃えて今大会が大成功に終わったことを強調した。

 

全てにおいて歴代最高記録を更新

 観客動員数、テレビ視聴率、インターネットアクセス数、さらには、試合中のゴール数や決勝戦のゴール数、アメリカFWロイド選手のハットトリックなど、全てにおいて歴代最高記録を更新したと発表した。

 総観客動員数は1,353,506人、1試合平均26,029 人。最高観客動員試合は、6月27日BCプレースでの準々決勝カナダ対イングランドの54,027人。開催国カナダの1試合平均動員数は48,381人、5万人以上を動員した試合が7試合と、全国6都市、5つの時間帯をまたぐという広大な開催地で、観客動員数から運営まで、「すべての面において成功したと思う」とモントポリ氏は語った。

 レガシーと呼ばれる大会終了後に国内女子サッカーに残される好影響については、代表チームが使用した練習施設を一般でも使用できること、カナダ代表の活躍により女子サッカーがますます盛んになること、今回の観客動員数や競技人口の増加から米国女子プロサッカーリーグWNSLをカナダにまで拡大できる可能性があることをあげた。

 カナダは女子サッカー競技人口では、人口比率にして世界3位。ジョン・ハードマン氏がA代表監督に就任した4年前から始まった育成プランと共に、さらなる競技人口の拡大と代表のレベルアップを目指すと語った。

 

世界での女子サッカーの地位向上を目指して

 今大会には史上最高の24カ国が参加し、8カ国が初出場国だった。世界的な女子サッカーのレベルは回を重ねるごとに向上し、前回大会優勝国の日本や今大会優勝したアメリカ、世界ランク1位のドイツなど、常に上位に名を連ねる代表国も決して簡単には勝てない試合が多かった。

 しかし選手やチームの技術が向上する中、女子サッカーの地位の向上はまだまだ遅れている。ヘンニFIFA女子部長は、「女子サッカーを重要視しない国々もまだまだ多い」と現状を受け止めている。競技人口を増やしてすそ野を広げること、商業面、マーケティング面、広報面、プロモーション面をもっと開発していくことが重要とし、女子サッカーに偏見を持つ国の連盟に働きかけること、女子サッカーの構造から認識を変えていく必要があると課題を並べた。女性がもっとサッカーに関わり易い環境を整えていくことも重要とも語った。

 

人工芝問題

 今大会は女子W杯では初めて、全試合人工芝で行われた。これについては、大会開催前から物議を醸していた。アメリカのワンバック選手を中心に人口芝導入反対運動も起きた。期間中も選手たちから苦情が出ていた。大会前には、FIFAの厳格な規格に従い、どの競技場でも同じ条件で試合ができると強調していたが、実際には、選手からは会場によって芝が全然違うという声がよく聞かれた。

 そして最大の問題点は暑さ。今大会は各会場とも暑い日が多く、「最も顕著な問題点は暑さ対策だった」とヘンニFIFA女子部長も認めた。ヘンニ氏は大会前から、人工芝使用が女子サッカーにとって利益があると推進活動をしていた一人。昨年10月には、自分が選手でも人工芝でやりたいと思うかと聞かれ、「イエス」と答えていた。

 しかし、この日の会見では、そういった人工芝に対する肯定的な意見は全く口にせず、選手やコーチ、チームから聞き取りを行い、技術的、医学的な見地からの調査を基にした分析を踏まえ、長短所を精査し、「大会後に判断する」と述べるにとどまった。

 大会前には、国内の練習場に応用できるため人工芝開催はカナダにとってメリットがあると語っていた大会委員会も、この日はレガシーの中で人工芝使用をあげることはなかった。

 次回2019年フランス大会は、全試合天然芝で開催する予定になっている。

 

ブラッター会長、 大会に一度も顔をみせず

 今大会は、FIFAゼップ・ブラッター会長が、優勝トロフィー授与式にすら出席しない異例の事態となった。多額の賄賂受け渡しがあったとされる汚職事件で揺れるFIFAは、ジェローム・バルク事務局長も大会を欠席。決勝戦終了後、表彰式のためにFIFA関係者が会場に現れると、ほぼアメリカファンで埋まった観客席からは大ブーイングが沸き起こった。

 優勝トロフィーは、イサ・ハヤトウ名誉副会長がワンバック選手とランポーン選手に手渡した。ブラッター会長の表彰式欠席についてモンタグリアーニ大会委員長は、「トロフィーを受け取る側は誰が手渡そうと気にしないだろう」と苦しい言い訳をしていた。

(取材 三島直美)

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