将棋の面白さを世界に伝える

4月18日、バンクーバー日本語学校で、プロ棋士・北尾まどかさんによる将棋ワークショップが開催された。将棋の歴史や魅力について講演した後、北尾さん自らが参加者と対局する時間も設けられ、日本語学校の生徒の他、約20人の一般参加者が集まった。

 「幼少期に父から将棋を教わったが、難しくてなかなか興味を持てなかった。高校生になり、久しぶりに将棋を指した時に負けて悔しかったが、同時に将棋の奥深さに気づき魅了されていった」と自身の経験を語った北尾さん。将棋の素晴らしさをもっと多くの人に知ってもらいたいという思いから、世界各地で将棋ワークショップを開催している。とりわけ子どもや女性にも将棋の面白さを伝えたい、という思いが強く、「どうぶつしょうぎ」という簡略化された将棋も開発した。「どうぶつしょうぎ」は3×4の将棋盤と駒に描かれた動物の絵が特徴。駒を漢字ではなく絵で区別できるうえ、進む方向が点で示されているため、将棋初心者でも将棋の面白さに触れることができる。また、北尾さんは「将棋は柔道や剣道のように、礼に始まって礼に終わる。将棋道ともいえるようなメンタリティがある。こういう文化も将棋を通じて世界に伝えられたら」と語った。

 質疑応答では、「どうやったら将棋が上手くなるか」「なぜ将棋を『指す』と言うのか」「棋士の人たちは対局中、何を考えているのか」など、多くの質問が寄せられた。北尾さんは、「とにかく経験すること。考えること。そのためにも、まずは将棋の楽しさや奥深さを知ってほしい。だから、子どもに対してはわざと負けてあげることも必要」など、プロ棋士ならではの回答で参加者を納得させた。

 

バンクーバー日本語学校で、はかま姿の北尾まどかさんに講習を受ける参加者たち

 

バンクーバー日本語学校で、はかま姿の北尾まどかさんに講習を受ける参加者たち

 

 講演の後は、会場に多くの将棋盤が並べられ、多くの参加者が将棋を楽しんだ。日本語学校の生徒らが、「どうぶつしょうぎ」を楽しんだほか、北尾さんは10人程の将棋経験者と同時に対局。参加者は北尾さんからアドバイスを受けながら対局したが、「負けたー」「悔しい」といった声が会場に響いた。「どうぶつしょうぎ」を指していた参加者は、「はじめて将棋をやったけれど、わかりやすくて想像以上に楽しめた」という。「将棋道」という考え方や、北尾さんが和装で将棋を打つ姿に感銘を受けた女性は、「初めて将棋というものをちゃんと知った。日本文化の神髄を見せられた気がした」と語った。

 北尾さんがこれまでに訪れた国は、中国・フランス・ベルギー・アメリカなど20近くに上る。今月は北米を中心に、バンクーバのほか、ワシントンD.C.(アメリカ)・ニュージャージー(アメリカ)でもワークショップを開催したという。今回のワークショップは、北尾さん自ら、バンクーバー将棋クラブに連絡を取ったことがきっかけで開催されたそうで、北尾さんの将棋普及に対する熱い思いがうかがえる。

 

バンクーバー日本語学校で、はかま姿の北尾まどかさんに講習を受ける参加者たち

 

バンクーバー日本語学校で、はかま姿の北尾まどかさんに講習を受ける参加者たち

 

(取材 佐々木宏輔)

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。