日本代表が再び頂点に立った。向かうところ敵なし、 そんな風格すら漂う日本の、そして上野投手の完勝だった。

今年も、カナディアン・オープン・ファーストピッチ・インターナショナル・チャンピオンシップが、サレーのソフトボールシティで開催された。各国代表が集うインターナショナルディビジョンは、7月16日から22日まで、世界4強、日本、アメリカ、オーストラリア、カナダに、ベネズエラ、中国の辞退による招待チームとしてカリフォルニアA’sが参加した6チームで行われた。
大会は好天に恵まれ、順調に進んだ。波乱だったのは、日本代表。予選5試合を1勝4敗、まさかの最下位で通過。大番狂わせと周囲をヤキモキさせたが、プレーオフに入るとエース上野の快投で一気に決勝まで上り詰め、オーストラリアを延長戦の末に下し連続優勝を飾った。MVP(最優秀選手賞)は上野由岐子投手が受賞した。

 

圧巻の快投劇、上野4連続完封試合でMVP

「文句なしのMVP」。表彰式でそうアナウンスがあった瞬間、全視線が1人の選手に注がれた。気づいていないのは本人だけ。名前を呼ばれて驚いたような表情で中央に走ると記念盾を笑顔で受け取った。
プレーオフに入ってからは、上野のひとり舞台だった。第1戦、第2戦を無安打無失点で完勝した。今大会初先発した第1戦を投げ終わって、「立ち上がりはどんな感じになるかなって感じはあったんですけど。思ったよりもちゃんと投げれて良かったです」と笑った。
「最初立ち上がりは思っているところにボールがいっていなかったので」と反省し、「アメリカとかレベルが上がった時に、危ないかなって感じがあったので、それを5イニング投げさせてもらって、うまく調整しながらといった感じです」と、余裕の投球だったようだ。そして迎えた第3戦アメリカとの対戦でも被安打わずか2。完封で3連勝と、チームを一気に決勝まで引き上げた。
決勝はオーストラリア相手にさらに凄みを増した。立ち上がりこそ走者を出したものの、尻上がりに調子を上げ、スピードも、切れも、球道も、バットでは叩くことができないほどに研ぎ澄まされていった。両チームスコアボードに「0」が並ぶ中、マウンド上は上野の独壇場だった。延長8回表、味方が2点を先取するとその裏を三者凡退に打ち取り、優勝を決めた。
「これまで楽に勝たせてもらっていたので、打線がこういう苦しい時に踏ん張るのは自分の仕事だという思いで投げられました。」と1点が取れずに苦しんだ打線を信じて、何事もなかったように笑った。この日は31歳の誕生日。バースデーに自ら花を添える完璧な投球で優勝を演出した。「日本語を聞くだけでも安心するし、みんな応援してくれて力をもらうので、また来年も頑張りたいなっと思います」と大声援とハッピーバースデーを送ったファンに感謝した。

 

若手中心のチーム

今年は若手中心でチームが組まれた。宇津木麗華監督によると、今年は大きな国際大会がなく、ぽっかりと空いた感じになるという。そこで、今回のアメリカ・カナダ遠征には、「若手中心の選手を据えた」と監督は語った。
去年、日本代表は今大会で優勝している。その時のメンバーは上野を含め5選手。あとは全員入れ替わった。
特に投手は上野以外の3投手全員が18、19歳。少しでも多く国際経験を積ませるために、ちょうどいい機会となったようだ。
日本代表は今大会前には、7月11日~14日までオクラホマシティで開催されていた第8回USAワールドカップに出場。世界5チームが参加したこの大会で、決勝でアメリカを破り2005年以来の優勝を飾っている。
今大会では、さらに若手を育成する準備を宇津木監督は着々と進めていた。独特の組み合わせのこの大会は、予選を最下位通過しても、決勝に残れるシステムになっている。それをうまく利用した。予選は徹底的に若手を起用。上野は1球も投げていない。結果は1勝4敗の最下位。それでも監督は、「若い選手が徐々に慣れてきて、予選最終戦のオーストラリア戦ではいい試合をみせた」と胸を張った。
それが功を奏したのか、上野の好投に引っ張られたのか、プレーオフでは予選で沈黙していた打線が爆発した。大量得点を演出するイニングが多くなり、第1戦のカリフォルニアA's戦では、全得点を2アウトから稼いだ。
「そろそろベテランも勝ちたいって言うから」。プレーオフ第1戦後の監督の言葉が今の日本代表の余裕と好調さをうかがわせていた。結果は優勝。「勝つことが何より自信になる」。決勝を終え、笑顔がはじける選手たちに胴上げされた監督も嬉しそうだった。

 

2020年に向けて

「2020年のことを考えて」。宇津木監督が若手を積極的に起用した真の意味がここにある。ソフトボールが2020年夏季五輪で復活する可能性が出てきたのだ。上野投手は「可能性があるだけに、今までと違うというか、すごくモチベーションも上がってきてるし、なんとかしたいなって思いですけど」と語る。
選手や監督ができることは限られる。それでもできることはある。それが打倒アメリカだ。「国際大会とかではやっぱりアメリカに勝たせない強さって言うのが、キーなのかなって」と上野投手。アメリカの独勝にソフトボールが五輪から外れた大きな理由があったからだ。
大会委員長グレッグ・ティム氏は、現在世界約130カ国で普及している女子ソフトボール、男子野球は五輪復活に大きな可能性があると期待している。関係者だけに「ちょっとひいき目というのもあるけれど」と笑い、「それでも他の競技に比べると5大陸すべてで普及しているこの競技が一番可能性が高いと思う」と語った。
今大会での決勝が日本対オーストラリアだったことも2020年に向けて大きな意味があったと関係者はいう。あとは「ファンの方の後押しというか、支援が一番大きいと思う」。これまでも、これからも、ファンを大事にする日本代表の思いを上野投手が代弁する。宇津木監督が今大会で起用した18歳、19歳という若い力は今回のような国際経験を重ね、2020年には25歳くらい。「ちょうどいいですよ」と大きく笑った宇津木監督の笑顔に期待の大きさが表れていた。

 

 

2020年ソフトボール・野球復活支援WBSCサイト
http://playball2020.com/

 

 

取材 三島直美 Photo by Sam Maruyama

 

日本代表プレーオフ結果
20日第1戦  日本7-0カリフォルニアA’s
20日第2戦  日本7-0オーストラリア
21日第3戦  日本5-0アメリカ
22日決勝戦  日本2-0オーストラリア(延長8回)

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