2016年10月20日 第43号

皆さんがテーブルマナーで一番知りたいと思っているのが、いただき方とその順番だと思います。出された料理を迷わずサクサクいただいていく方と誰かのまねをしながらいただく方がいます。さて、今の皆さんはどちらでしょうか。少しずつ知識を習得して実践ができれば、想定外の信頼を得るものと思います。

 

「日本料理にも流派があった」

 私はこれまで「ひと箸めは左側からいただきます」と協会で教わった通りに指導してきました。左側からという理由は「日本は右側を上位、左側を下位とする」右上位を基本としている国だからです。このような理由からも出された料理のひと箸めは、下位である左側に盛り付けされたものからいただきましょう」と言っていたのです。 

 ところが、実際にあちこちの日本料理店でテーブルマナーの講座を開催してみると、出てくる料理は必ずしもそうでないことがわかりました。そうして7年がたった頃、茶道や華道に流派があるように日本料理にも流派があり、その流派ごとに盛り付けの仕方が違うということを料理人からやっと教えていただきました。今更そんなことを言われても…。正直とても困りましたが、これは受け入れるしかありません。その後は、盛り付けの基本も少しずつ教えていただくようになり、私なりに考慮するようにしました。 

 

   いただき方で間違いがないのは、料理長がいただく順番をサービススタッフに伝え、サービススタッフがお客様に説明するのが一番です。どれが薄味でどれが濃い味なのか作った本人でなければわからないものもあるからです。しかし、昨今の飲食店ではサービススタッフの教育が追いつかないうえに、料理人も日本料理のテーブルマナーを心得ている人が少ないようです。そこで今回は流派にこだわらず、一般的ないただき方を概論として6つあるうちの2つのことをお話します。

  ① いただく順番を考える 

 ⇒全部の料理を最後までおいしくいただくためには、薄味から濃い味のものをいただくようにします。始めから濃い味のものをいただいてしまうと繊細な薄味がボヤけてしまうからです。

  ② 残りの景色を考える 

 ⇒複数の方々で食事をする以上、いただき方をお互いに見られることになります。大好物だからといって中央にあるものから箸をつけると、そのあとがぽっかり空いてしまいます。場合によっては盛り付けが崩れてしまうかもしれません。左側、または箸に近い方の右側のものをみてどちらか薄味のものからいただきます。

   自分の分の料理だから好き勝手をするのではなく、周囲からの見た目の美しさ、不快を与えないようにとする気遣いができること自体がすばらしい心構えですよね。   

 

 食事をするのに、そんなに気を使ったら食事を楽しめないのでは? と思うかもしれませんが、習慣になればそれほど気にならなくなります。それよりもガサツである方が失点です。特に、仕事上では言葉だけで相手が信用しきれないとき、食事の仕方で相手の本性がわかる場合があるとさえいわれています。 

(文 福本 衣李子)

 


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福本衣李子 (ふくもと・えりこ)プロフィール
青森県八戸市出身。接客コンサルタント。1978年帝国ホテルに入社。客室、レストラン、ルームサービスを経験。1983年結婚退職。1998年帝国ホテル子会社インペリアルエンタープライズ入社。関連会社の和食店女将となる。2005年スタッフ教育の会社『オフィスRan』を起業。2008年より(社)日本ホテル・レストラン技能協会にて日本料理、西洋料理、中国料理、テーブルマナー講師認定。FBO協会にて利き酒師認定。

 

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