2016年9月15日 第38号

「かんぱ〜い!」同席者と笑顔でカチンカチンとグラスを合わせる音。皆さんも一度は耳にしたことはありませんか? もしかしたら乾杯はグラス同士を合わせるのがマナーだと思い込んでいませんか?でも改まった席ではグラスは合わせないのがマナーです。その理由は…。

理由1. 相手の力加減によっては、お酒がこぼれるかもしれません。
理由2. 高価なグラスは薄いので、ひびが入る危険性があります。
理由3. 音を立てないほうが品位を保てます。

 

改まった席をどのように区別すればいいのでしょうか?

 会食の場面は大きく二つに分けることができます。

 一つは、結婚式や謝恩会など『式』や『会』が付く名前の会食。また、接待などでも初対面や会社全体としてタイトルの付く会食の場を改まった席とします。判断基準は非日常的な会食、会場かどうかを目安にするとよいでしょう。

 二つめは、親しい間柄で日常的な場所での会食です。同年代の同窓会、あるいは上下関係があってもお互いが許せる間柄でしたら、幹事、年長者の判断にお任せでいいと思います。

 

日本酒の場合、どのように盃で乾杯をすればいいのですか?

 昨今では、乾杯はビールで行われることが90%以上です。日本料理でも日本酒で行われることは全くと言っていいほどありません。ですが、もしかしたらどこかで日本酒での乾杯もあるかもしれません。(なにしろ日本酒は日本の国酒ですから)そんな時も慌てることがないようにしておきたいですよね。盃でも上記同様と覚えておけばいいと思います。

 

女性の場合、乾杯時に注意すべき点はありますか?

 女性はグラスを持つ指を四指揃えると美しく見えます。また男性や年上の方よりグラスの口を低くすると謙虚さが伝わると思います。男性も指を広げ過ぎないようにしましょう。その方がスマートに映ります。

 

居酒屋さんなどでも、本来はグラス同士を合わせない方がいいのでしょうか?

 現在の居酒屋さんでは、グラスを合わせることが一種のコミュニケーションになっているようです。その証拠に「まだ、あの人とカチンしていない」と聞くことがあるからです。乾杯の行為で、意思疎通がしやすくなるのはとてもいいことだと思います。また、ビールジョッキは丈夫でヒビが入ることもありません。ですが、改まった席では日常の習慣が、つい出てしまうこともあります。そこでカチンとしたあと、もう一度アイコンタクトで乾杯する練習をしておけば、改まった席でも対応しやすくなるのではないでしょうか?

 

ワイングラス、シャンパングラス、タンブラー、ジョッキの注意点はありますか?

 やはり同席者に対して、美しく見える持ち方の配慮が必要です。    

 脚の長いワイングラス、シャンパングラスは、四指を揃え親指と共にしっかり持ちます。小指を立てないようにしましょう。

 脚の短いグラスは、脚の長いグラスと同様ですが、指が余るようでしたら、小指を底に移動してもいいでしょう。

 タンブラーは、指を揃えグラスの二分の一より下を持つときれいに見えます。

 ビールジョッキは、取っ手の下の方を持つとより安定します。

※グラス同士を合わせるのは、ビールジョッキだけが望ましいでしょう。
※高級店では、たとえ気の合う人同士でも、グラスを合わせないのがマナーといえるでしょう。(静かなレストランでチンと鳴り響くと注目を浴びてしまいます)
※基本的にグラスは割れ物だということを理解しておきたいものです。
※同席者が乾杯のマナーを心得えていない場合、静かに合わせるようにしましょう。そしてその場でご忠告するのではなく、後日が望ましいでしょう。これからの楽しい食事の時間が気まずくなる可能性があるからです。

 

●いずれにしても改まった席とそうでない席、会場や参加者の顔ぶれ、会の趣旨を考慮し、その場にふさわしい乾杯の仕方を、瞬時に見極められる力を身につけることが必要です。  

 次回からは、日本料理のテーブルマナーについて述べたいと思います。

(文・福本 衣李子)

 


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福本衣李子 (ふくもと・えりこ)プロフィール
青森県八戸市出身。接客コンサルタント。1978年帝国ホテルに入社。客室、レストラン、ルームサービスを経験。1983年結婚退職。1998年帝国ホテル子会社インペリアルエンタープライズ入社。関連会社の和食店女将となる。2005年スタッフ教育の会社『オフィスRan』を起業。2008年より(社)日本ホテル・レストラン技能協会にて日本料理、西洋料理、中国料理、テーブルマナー講師認定。FBO協会にて利き酒師認定。

 

 

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