2020年4月30日 第14号

 先ずは、41年間という長きにわたり日系社会にいろいろなニュースや情報等を発信していただき、誠にありがとうございました。日系社会にとりましては、なくてはならないバンクーバー新報さん。でもついに今回が最終号となってしまいました。とても残念ですが、致しかたありません。改めまして、お疲れさま、厚くお礼申し上げます。

 このエッセイですが、2001年から毎月1回連載しておりました。こんなに長く続くとは夢にも。この「外から見る日本語」の名前も社主の津田さんと相談して決め、土佐弁なども教えて戴き、いろいろ昔のことが走馬灯のように懐かしく思い出されます。

 それにしても、このコロナ騒動、さらに感染拡大が続いており、バンクーバーも外出自粛が出て、もちろん当学校も休み、まだまだ家に閉じこもり生活を余儀なくされそうで、でもしょうがないぜよ。

 そんな中、日本語を教えている卒業生のKさんからこんなメールが入った。家からほとんど出られないので、暇に任せて、日本語教育の本など読んでいますが、暇に「まかせて」と「まかして」と、どちらが正しいのでしょうか、である。うーん、この慣用表現に関して、そんなことよりはもっと大事なことを認識してもらいたく、早速メールでの講義を始めた。

 先ず、この「暇に任せて」はいかんぜよ、「暇に飽かして」が正しい慣用表現ぜよ。「飽かす」は余っているものをふんだんに使う、暇がたっぷりあるので、時間をかけて物事を行なうこと。Kさんの場合は「暇に飽かして、本を読んでいる」がふさわしい。

 でも、最近は「暇に任せて」のほうがはるかに多く使われており、すでに辞書にも載っている。確かに「飽かす」はあまり聞き慣れず、「任す」のほうが分かりやすい。でも意味はかなり異なる。その前にKさんの質問、「まかせて」と「まかして」の違いであるが、これはどちらでも問題なし。かなり前のエッセイにも書いたが、これは「任す」と「任せる」という同じ意味の動詞が二つある、ややこしい特殊な動詞で、「飽かす」と「飽かせる」も同じである。「あかして」と「あかせて」も本人の好きなほうでノープロブレム。

 さて、「暇に任せて」であるが、この「任せる」は人任せのように、自分の意志がなく、「暇に任せて、ぼんやりテレビを見ていた」などはいいであろう。でも「暇に任せて、書いたエッセイが入賞した」などはやはりそぐわない。「暇に飽かして、書いたエッセイ」にすると、十分時間をかけて、頑張って書いた雰囲気が伝わる。やはり日本語教師としては、正しい慣用句として「暇に飽かして」を使ってもらいたい。

 最後となるこのエッセイですが、暇に飽かして、書き上げました。でも逆に時間があり過ぎてうまく仕上がらず、ごめんぜよ。でも最終号まで続けられたのは皆様の励ましの言葉でした。長い間お読みいただきありがとうございました。おおきに!

 

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読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。