2020年2月13日 第7号

 1974年春のことである。小生の結婚式にて、恩師児玉先生は祝辞で「佐藤君!歴史の中で生きていることを忘れないで欲しい」という意味のことを言われた。

 当時の僕には、いろいろな夢があったが、所詮、大草原に咲く小さな花のようなものでしかなかった。僕の力は、弱く小さなものでしかなく、ただただカナダという大きな夢の中で生きるものでしかなく、先生の話の意味するところはよく分からなかったのであるが、過日、司馬遼太郎さんの本を読んでいたら、「1970年は政治の季節だという。文久元年ほどでないにせよ空騒ぎを含めて、大いに国中が沸騰するだろう。長井雅楽的な実論もでてくるにちがいない。」とある。小生がカナダに渡加した年のことだ。

 さらに「『航海遠略策』というものがそれである。かれは鎖国攘夷の信奉が日本の歴史から見ても滑稽であり、さらに世界の現実とおよそ適合しないことを説き日本はむしろすすんで開国し、商業の面で世界を制圧する大商船隊をつくり、それによって得た富で武力を蓄積して国家を守るというものであった。」とある。

 1970年ごろは、日米の貿易摩擦の中で日本の食管法により米の値段が国により守られていたが、それが自由化になれば、米の値段が不安定になるという大きな危惧があった。いわば米の自由化は日本農業にとって、江戸時代の黒船の来航の再来のようなものなのである。

 当時、学生運動も盛んで、そのために東大入試が中止となった。その学生運動で東大のキャンパスに立てこもる東大生に対話を試みた有名な作家三島由紀夫が自決したのもこのころのことである。

 そういう中にあって、小生は米国艦隊の黒船に乗り込み、米国行きを希望した吉田松陰のようなものであったのかもしれない。かの国の大農業が見てみたいという強い思いがアメリカ行きをかりたてて僕はカナダに来て、その農業規模の大きさに、ただ驚くばかりであり。この農業に古い日本の農業が立ち向かうには、面積は小さいながらも、古いくねくねした田んぼや畑の境界線を区画整理をして四角くしてトラクターなどが入りやすくすべきであろうことを父や友に語り、手紙に書いたりした記憶がある。

 今頃、新幹線で九州から青森まで旅をすれば、車窓から見える田園風景は区画整理された農業地帯ばかりである。これも日本の農業の歴史の流れがあり、児玉先生が言われた歴史の中で、僕もささやかに生きてきた思いがするのである。

 妻の生家は愛知県と岐阜県の県境で中仙道に近い山奥の村にあり、先祖代々庄屋をしていた。庄屋階級は、江戸時代に農村ではあったが、読書階級で読み書きソロバンができて年貢米を小作農家から集めて御上に差し出すことを役目としていたらしい。

 江戸時代中ころにヨーロッパでは、テムズ川が凍りつく寒い時期があったという。当然、日本も寒くなり米も充分に収穫ができなくなるが、役所には年貢は出さなければならず、農民は大変であったろうと思われる。

 テムズ川やアメリカのニューヨーク湾が凍結した頃、つまり14世紀から19世紀にかけて地球の寒冷期で寒い日が続いていたらしい。

 中央公論社の『日本の歴史』奈良本辰也著を見れば、当時の日本も度々、深刻な冷害に見舞われたようである。「宝暦一七五五年 奥羽地方の一帯を襲った冷害は、深刻な飢饉を引き起こした。盛岡藩だけでも、この飢饉に死んだ人は六万余人といい、南部駒として名高いこの地方の倒れた馬は二万余匹といった。『南部史要』から。(中略)この冷害の様子は、四月頃から現れていたという。すなわち、秋になってようやく人々の目にもふれ、手にも届くことのできる初茸が、四月に生いたっていたのである。冷気が去らず、雨が降り続いて、あたかも秋を思わせる気候であったのだろう。」とある。

 さらに「『八戸藩史料』から抜き出してみると、宝暦十二年(一七六六)は、『当年四月上旬より五月中旬まで旱魃、同中旬より下旬まで冷風吹続、氷雨(ひさめ)度降り、七月二三、二四日共に大風』があって、この年収穫は高二万石のうち一万六九六石斗を失う」とある。江戸時代の凄まじいほどの天災の様子がまだいくつか書かれてある。それから推察すれば、今頃、世界じゅうで起こっている大雨とか猛暑などの異常気象は次の小氷河期の前ぶれのように見える。このことは化石燃料の大量の消費とは別の問題のようにも見える。

 太陽の黒点の活動は次第に弱くなり2030年頃には再び小氷河期になるという話もある。そのためには、燃料(エネルギー)や食料を今から備蓄しておくべきであろうか?

 余談であるが、この本はリッチモンドの姉妹都市和歌山市からの寄贈図書である。    

 

 


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