2018年2月1日 第5号

 日本人が中国北東部にある満州を統治していた頃、小学生の教育も日本語が高学年から使用されて日本化が進められ、小学校校長先生の部屋には、中国最後の皇帝の縁戚溥儀の写真が飾ってある。医者である夏先生の三男はこの学校の教師をしていたが、ある時、この溥儀の写真にうっかり、おじぎをするのを忘れた。「すると校長が、『さっさと頭を下げんか!』とどなりつけ、よろけるほど強烈な平手打ちをくわした。夏先生の息子は激昂した。『なんで毎日、ペコペコ頭を下げて暮らさなくちゃならないんですか? まっすぐ立っているのが、そんなに悪いのですか?お辞儀なら、朝礼の時にしたばかりです』校長はもう一度平手打ちを見舞ってから、どなりつけた。『貴様らの皇帝ではないか!』すると、夏先生の息子もどなり返した。」と本文にある。その後、このことで息子は思想犯の烙印を押され逃走したという。そして行方不明となる。

 主人公が中学生になる頃には、紅衛兵による文化革命が起こり、再度この家族も共産党により苦しい生活をよぎなくされる運命は六道輪廻なのであろうか?なんと過酷な運命か? この紅衛兵運動の頃、僕は平穏な中学生活をしていたが、あるとき中国が原爆の核実験に成功したという大ニュースがながれ、学校の授業でこの原爆成功をどう思うかを作文に書いたのが印象的であった。

 さて、1945年8月(終戦)、主人公の祖母達は、天皇が降伏したという重大放送を聞く。夜が明けると、日本人将校が切腹をして、その家族がリンチされ、婦人と子供の死体がころがっていたという。夏先生のとなりの日本人一家も服毒自殺したという。錦州のいたるところで、日本人が自殺したり暴行されたりした。日本人の家は、例外なく略奪されたという。

 祖母は一度も生徒を殴らなかった田中先生を家族の理解を得て、先生に中国人の服を着せて、祖母のいとこということで、自宅の奥の小部屋にかくまうのである。やがて、ソ連の赤軍がやってくる。「ロシア兵は工場に残っていた物資を分配するだけでなく、工場そのものを解体してソ連に持ち帰ってしまった。ロシア兵は賠償金の変わりだと言ったが、中国人から見れば、産業に大打撃をあたえる略奪行為にほかならなかった。」ロシアの兵隊が錦州に来てから一週間後には、早くも中国共産党が日本軍を撃退して新生中国を民衆の手に取り戻すために、自分達が8年間いかにして戦ったのかの集会をひらいていた。1945年に日本が去り、新しい勢力共産党は秩序の回復をはかるのである。

 刑務所の看守をしていた叔父の話では、共産党は因人のなかでも、一番勇敢な人達だったということだ。『本当に骨のあるやつらだ』と叔父はよく言っていた。『首をくくられる直前まで、抗日の歌を歌って叫んでいたんだよ』。

 母が共産党に入った1947年から1948年は新生中国の苦闘の時代、第五章の「米10キログラムで娘売ります」である。中国国内の食料が不足してくると米10キログラムで娘を売りますということが異常であり、ぼくのスゴイ関心事でもある。

 最近、問題となる韓国での日本による慰安婦問題をこれから類推すれば、理解をし易いかと思うが、これが正しいとは断定できないのは残念である。

 国民党が錦州を制圧した。本文には「1947年から48年の冬にかけて、経済事情は悪くなる一方だった。食料不足や価格つりあげに対する抗議行動が急増した。錦州は北方に駐屯する国民党の大部隊への重要な補給基地であったため、1947年の12月なかばには、穀物をたっぷり貯蔵した国民党の倉庫が二万の群集に襲われる事件も起きた。ひとつだけ羽振りのいい商売があった。少女を売春宿や金持ちの奴隷兼女中に売り飛ばす仲買業である。町のあちこちに、食べ物と交換で子供を売る乞食の姿が目立った。やせ衰えた身にボロをまとい絶望のあまり放心したような表情の女乞食が、板門をでたところで何日も凍土に立っていた。女の子の着物の後ろの襟につっ立てがあり、下手な字で『米十キログラムで売ります』と書いてあった。」とある。

 ここから慰安婦問題を推察すれば、日本軍の要請に女子を買う仲買業者が韓国にもいたと想像できるが、小生の私見にすぎない。日本でも「2・26事件」が起こる頃、東北地方は冷害による米の不作で娘を売る農家も多くあったという。「2・26事件」に参加した兵士の中にもそういう農村からの出身者もいたという。

 そのことが、やがて日本を満州への軍拡へ導いてゆくことは歴史の必然性なのであろうか?

 我々ホモサピエンスは近い未来に人工的にAIによる善なる心を創ることができるのであろうか? コンピューターの能力はある人には善であっても、他の人には善ではないことがあるかもしれない。人は人の善なることを信じつづけねばなるまい。

 


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