2017年10月12日 第41号

 なんとも、訳のわからないタイトルをつけてみた。歌のことは、まあ、素人と言ってよいが、歌を聴くのは好きであり、機会があればいそいそとでかけるのである。

 夏の終わり、晩夏である。ノースバンクーバーで歌のグループのコンサートがあるというので、歌い手である友の差し入れのジュースをぶら下げて、ノタノタと老木の僕は出かけた。ピアノ演奏が前田たえさんというのが良い。ある時はゆっくり、ある時はジャズのように激しく手と指を動かしている様子は見ていても気持ちがよく、からだが浮き浮きしてくるのである。

 プログラムの最後の方でプロのように「トーキング・ア・チャンス・オン・ラブ」を歌われたジュリアさんに後で話を伺うと、昔、プロとして歌われていたと言う。なるほど、もとプロならうまいはずである。

 もう一人、気になる方がいた。トニーさんという、かなり年配と見受けられる方が丁寧に『落葉松』を歌われた。

 『落葉松』? 僕はなんと読むのかよく分からなかったが、後で調べてみると『からまつ』と読むらしい。しかも作曲が小林秀雄となっている。「エー!」あの有名な歴史学者がこんなオペラふうの歌を創っていたのかと妙に感心をしたが、調べてみると別の作曲家小林秀雄さんであった。しっとりとした落ち着いた曲を丁寧に歌われたトニーさんも、聞けば、ピアノの調律師をしておられたというから、ピアノの音と同じように、丁寧に歌われるのが分かるような気がした。難しい曲を「歌ソロサロン」の会で歌われることは、本人も深い思いいれがあられて好きなのだろうと想像した。

 落葉松は、調べてみると、中国に多く自生しているようである。この松の油(やに)が多く、日本では、この松の油で飛行機の燃料をつくる試みがなされたようである。冬でも葉が枯れることもない松が、緑の美しい夏の季節ではなく、むしろ、何もなくなった冬の枯れた庭の中に鑑賞するものがあるように思われる。栄枯盛衰の世の中で何時の時代、何時の季節も変わらぬ濃い緑の針の葉を見せる松の姿こそに日本庭園の楽しみ方があるように思う。松の風景は日本人の心かもしれない。

 この松の葉には血圧を下げる作用があって、松の葉を毎日噛んで、少しその唾液をのむだけで効果があるように聞く。同じ松でも落葉松は落葉樹である。秋になると葉が赤茶色になり、葉が散るのである。

 少し昔、長男の婚約が決まり、ケベックに住む婚約者の両親を訪ねた折、ハイウェイの車窓から見る東部カナダに茶色く変色した枯れ木のような針葉樹が時折見える。バンクーバーにはない木の種類である。今思えば、あれが赤茶色に葉の色が変わっていたから松の一種であったのかもしれない。夕食の時にその話をしたら、後にお父さんが自分の山に自生している落葉松と思われる苗木に水綿を巻き、数本を宅配でわざわざ送ってくれたのには驚いた。数年前の、バンクーバーの夏の乾燥で一本は枯れたが、まだ2本が元気に我が家の鉢の中で成長をつづけている。秋が深まれば、この落葉松も赤茶色に変化してゆくのである。

 落葉松は建材としては人気はないが、建築現場の足場を組む丸太として使われたらしい。学生時代に地元建築会社で資材を現場に運ぶアルバイトをした時に運んだ丸太は、落葉松であったのだろうと、懐かしく思い出しているのである。

 「春がまた来るたび ひとつ年をかさね 目に映る景色も少しずつ変わるよ 陽気にはしゃいでた幼い日は遠く 気がつけば五十路を越えた私がいる 信じられない速さで時が過ぎさると知ってしまったらーー」という歌は、竹内まりやの『人生の扉』である。最近、YOUTUBEでよく聞いている。次はその時の僕のコメントである。

 コメント1「気がつけば、60歳も半ばを過ぎた。健康だから忙しくしているけど、時の流れの早いことを思う。僕の人生に青いバラの花(コンピュターの画像)は咲くのだろうか?咲くことのない青いバラの花を研究して、咲かせることに成功した人がいると聞く。我が人生にも幸せの青いバラを咲かせてみたいものである」 

 コメント2「人生100歳の時代だそうです。日本の場合80歳で不動産の資格をとり起業した女性とか、60歳で医者になった男性の方がいるそうです。50代、60代は、まだ人生の扉をあけるチャンスがありそうです」

 


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