2017年2月9日 第6号

 40年ほど前、私は『IMMACULATE CONCEPTION』の教会会員のひとりだった。

 夏のバザーが近づいた時、婦人会会長のリタが「あなた、手相読める?」と聞いた。「うん、多少読める」と言ったら、「そう、じゃ、手相読んでよ。ひとり2ドルでね」。(あの頃の2ドルは大金だった)

 で、当日私はジプシーの占い者よろしくフィジー島で買ったカフタンを着て机の前に座った。(ちなみにカトリック教会では占いに行ってはいけないことになっている)。2、3人観たら、「あの人の、当たるわよ」と言ったらしく、ぞろぞろと10人くらいならんだ。

 そのうち、一人の男が来て座った。私は手相観であるから、顔は見ないで手だけ観ていた。男が広げた掌を見て、私は思わず大きな声で言った。「まあ、あなたは小さい時に大変な病気をしましたね」。「そうです。で、その結果僕は精神薄弱になっちゃったんです」。私ははっとして初めて男の顔を見た。そういえば、そうかもしれない。でも話はちゃんとしている。「ですが、僕は結婚したいのです。この結婚は良いことでしょうか」。私は言った。「この結婚は良い結婚です、結婚なさい。それから経済的に困ることはありません。(この保証は容易いことなのだ。何故なら人間の生活をつかさどる者は神であって人間ではない。真面目に正直に神の掟に従って生きて行こうとする人間を神が見棄てたもう訳がない)。

 男は立ち上がって、「ありがとうございます」と頭を下げて向こうに行った。で、次に、彼のガールフレンドが来たが、彼女にも同じようなことを言った。二人はうれしそうに肩を並べて帰って行った。

 それから1年半ほど経ったある日、私はロイヤルバンクの中で列にならんでいた。すると一人の男がつかつかと近寄って来て言った。「憶えていらっしゃいますか。僕はあなたに手相を観ていただいた者です」。私はこのしっかりした感じの男を驚いて見つめた。「僕たちはあなたがおっしゃったように結婚しました」。「まあ、良かった。で、どうです」。「ええ、とても上手くやっています。最近家を買いました」。「よかったですね、グッドラック」。彼はもう一度「ありがとうございます!」と言って別れていった。私は驚きと感動のために、しばらくぼんやりしていた。思うに、私のひと言のために、彼の隠れていた能力が芽を出して、夫としての責任感と共に、普通、又は普通以上の人間になったのであろう。口から出すことばの大事さを改めて感じたことである。

 


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