2018年6月28日 第26号

 日本から来たばかりの明美子ちゃんは父がポーランド人、母は日本人。彼女とブロードウェイシティーセンター駅で1時に待ち合わせた。ふっと交差点を見ると、楽器のケースを肩にさっそうと、長井セリさんが交差点を渡り、ちょうど来たバスに乗って行った。ああ、彼女の楽器演奏もあるのだ! と今日の演奏会が更に楽しみになった。時はもう1時過ぎ、しかし、彼女は来なかった。やがて老婆は一人、隣組を目指し歩き始め、8thで迷子になった。どこが隣組か分らない。誰かに聞こうと立ち止まる。その時だ、老婆の横にふっと(神様が助けてあげるよと言ったかどうかは知らない)日本人らしき女性がいた。遠慮なく老婆は話しかけ、隣組の場所を聞く。すると彼女はなんと隣組のボランティアで名前は「森です」と言った。親切で、話しながら一緒に歩く数分がとても楽しかった。

 隣組に到着すると入口に大勢の人がいて、まぁ賑やか。温かーい、皆んなの笑顔「あれー、自分の家に帰ったみたい!」だった。さっきの森さんは、もうそこにはいなかった。しかし、いる、いる、知っている顔、顔、顔。もう嬉しくなって、「天国ってこんなところぉ?」。

 やがて会場入りし、ウインズの合唱が始まる。途端に「やーれん ソーラン ソーラン ソーラン」。軽快に体がわくわく、なんだか踊りだしたくなるリズムが続く、『ソーラン節』だった。「驚かせてごめんなさい」とステージの中央へ出て来たMC、その声は難聴の私にはよく聞こえない。半分くらいは想像だが、北海道の漁師が網釣ニシンを男だけでなく女も一緒に引き上げる様子を歌った、と言ったようだ。しかし、その軽快な歌声は帰宅後心に残って、台所でなんとなく「ソーラン ソーラン」と歌が口から出る。

 懐かしい歌が次々に合唱され、目を閉じて静かに聴いていると涙が出ていた。(この老婆よく泣くねぇ)でもね、堪らなく懐かしい! 何が懐かしいって? それは、この老婆のずっと、ずーっと通って来た道、その全てが、あの静かに、それは静かに歌い始めた夕焼け小焼け、浜辺の歌、サンタルチアなど「ウインズ」の美しいコーラスに入っていたようなのだ。慌ててハンカチを探す。涙。

 またもう一曲、それは鈴の音を上手にならしながらの、「雨降りお月さん」の合唱。そのベルが心に沁みた。実にきれいな音だった。歌い手8人とシカゴとバンクーバーを往復するピアニストのアレキサンダー恵子さん、指揮は桑原茂子さん、合計10人が今日この日のウインズだった。モコさんの指揮ってすごーい! 人が変わったみたいに熱が入っている。選曲も集まったシニア達、特にこの老婆には良かった。いってみれば、たぶん日本人なら皆それぞれ懐かしい、思い出いっぱいの名曲をあの名歌手揃いのメンバーで歌うのだからねぇ。そして、隣組、ここが老若男女助け合いの場でもあること、バンクーバー在住40年、情けないこの老婆、認識不足をつくづく反省した。こんなに皆に愛されている隣組なのだと、この1日で学ばされた。

 それから老婆は3時半に賃貸コンドーのテナントに別れの挨拶に行った。若い2人のテナントはポーランド人。ワルシャワで結婚式を挙げる。別れに一つの額をくれた。「For The World's Best Landlord」という優しい言葉と、カナダの国旗を中心に、左はポーランドの国旗、右は日本の国旗と、3つの国旗が描かれていた。ポーランドの国旗は上半分が白、下半分は赤、日本は全部が白く中央に丸く赤。彼女が描いたカナダの国旗はハート形。国旗の右端赤は大西洋、中央の白はロッキーマウンテンの雪と赤い楓、左端の赤は太平洋だ。3国の共通点は全部赤と白。美しい、老婆にはとても意味ある額を頂いた。

 会えなかった明美子ちゃんはシティーセンター駅で待っていたそうだ。かわいそう!あの素晴らしい合唱、ピアノとビオラの演奏、聴かせてあげたかった。そして、平和な老婆の1日が終わった、ソーラン、ソーラン、ソーラン。

許 澄子

 

 

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