2018年6月21日 第25号

 屋外でビールを片手にバーベキューをするには、最高の季節になりました。しかし、気になるのはそのカロリー。食べるものを慎重に選び、またお酒の量もそこそこに 抑えないと、あっという間に体重が増えてしまいます。そこで今日は、ダイエットのお話です。

 多くの新興企業や技術系の企業が密集する米国カリフォルニア州のシリコンバレーでは、企業のエグゼクティブ達が生産性の向上のために、健康管理を非常に強く意識して生活していることは有名です。2年前には、オーガニックのコーヒーと無塩のグラスフェッドバターを使った「バターコーヒー」によるダイエットが流行しましたが、これは既に時代遅れ。最近では、断続的な「断食」(intermittent fasting)が流行し、これはバイオハッキング(Biohacking)とも呼ばれています。このレベルになると減量はもとより、断食により得られる高揚感で、生産性の向上を目的としている人もいるそうです。

 体重管理の基本は、カロリーの摂取と消費のバランスを調整することにつきます。現代は「飽食」の時代と呼ばれるように、基本的に人は食べ過ぎにより、体重を増やしてきました。従って、食べなければ体重が減るのは、当たり前。しかし短期の減量に成功した後に、大きくリバウンドしては元も子もありません。しかも、食欲は、人間の三大欲の一つですから、その欲求を満たしながら減量するためには、やはりカロリーを減らした食事を長期にわたって継続する方が、無難と言えます。

 そんな分かりきったことを改めて実行するためには、ちょっとした意識改革が必要です。世界保険機構(WHO)では、肥満は、脳内の様々なホルモンが関与する慢性的な「疾患」と考えられています。従って、これからは肥満という疾患を治す必要がある(!)ことを意識していきましょう。肥満を解消すれば、高血圧、2型糖尿病、脂質異常症などのリスクも下がってきます。

 極度の肥満患者に対し、外科的な手術により(Bariatric Surgery)、肥満を矯正する方法が取られることがあります。近年、この手術件数は世界中で大きく増加しており、カナダの2012年から2013年にかけての統計では、6千件以上のBariatric Surgeryが行われました。

 また、疾患あるところには薬あり。減量を補助するための薬もいくつか販売されています。

1、Xenical(成分名:Orlistat)は、内服により腸内のリパーゼに作用し、結果的に腸管からの脂肪の吸収を阻害することで、減量効果を示します。

2、Contrave(成分名:naltrexone/bupropion合剤)は、内服により、中枢神経系に作用し、食物摂取とエネルギーバランスを整えると同時に、脳の報酬系回路に基づく摂食行動を抑制します。

3、Saxenda(成分名:liraglutide)は、2型糖尿病治療薬Victoza®と同成分で、肥満症という新たな適応を得て製品化された薬です。1日1回の皮下注射により食欲を制御し、食事の摂取を抑制することで体重を減少させます。また、グルコース濃度に応じて、インスリン分泌を促進あるいはグルカゴン分泌を抑制し、血糖降下作用をもたらします。

 ところが、これらの薬は決して安価ではありません。では、断食や薬以外にできること、それは運動です。ウォーキングのような有酸素運動が効果的です。目標は1週間につき150分。毎日30分の散歩が、週5日続けれられるようになるのが理想です。気候の良い時期ですから、毎日の運動を心がけてみてください。

 最後に宣伝です。7月6日(金曜日)に日系センターで開催される、日本人プレママセミナー「妊娠と薬とエトセトラ」(主催JAMSNET CANADA)で、「妊娠と薬の微妙な関係〜安全な薬の選び方〜」というタイトルで薬についてお話しします。参加は「無料」となっております。妊婦の方や、今後妊娠を検討中の方は、お誘い合わせの上、是非ご参加ください。参加登録はこちらから↓
https://www.eventbrite.ca/e/45413013546

 


佐藤厚

新潟県出身。薬剤師(日本・カナダ)。
2008年よりLondon Drugs (Gibsons)勤務。
2014年、旅行医学の国際認定(CTH)を取得し、現在薬局内でトラベルクリニックを担当。
2016年、認定糖尿病指導士(CDE)。

 

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