2018年4月26日 第17号

 先週の15日から21日は、カナダの「全国ボランティア週間」でした。今年は、ボランティアの価値を褒め称え、信頼、能力/適正、繋がり、コミュニティーを築くことがテーマでした。いろいろなところで、ボランティアの貢献に感謝するポスターやメッセージを見かけました。特別なイベントが行われるところもあったようです。私がボランティアをしている機関でも、ボランティア休憩室に、スナックや飲み物の他に、ちょっとしたプレゼントも用意されていました。

 ボランティアの定義は、「無償で自発的に社会活動に参加したり、技術や知識を提供したりする人、またはその活動」とされています(ブリタニカ国際大事典小項目事典より)。一般的に、ボランティアの理念として、自分から行動すること、ともに協力し合うこと、見返りを求めないこと、より良い社会の実現を目指すことが挙げられます。

 すでにご存知かも知れませんが、BC州では、 中等教育の過程を終えて卒業するためには、必修科目の単位取得に加え、10年生から12年生の間に、少なくとも30時間分の「職業体験またはボランティア/コミュニティー・サービス」を行わなければなりません。卒業するまでに30時間を消化できないと、同級生と同じ時期に卒業できなくなる場合もあります。同じ期間内に、職業関連のボランティアを90時間以上行うコースを履修すれば、 単位(4単位分)が取得できます。カナダの他の州でも、ボランティア活動や職業体験を卒業要件としているところが多いようです。

 日本でも、10年ほど前から、ボランティア活動を公立高校の必修科目とする教育委員会が出てきました。しかし、教育課程の一環として、奉仕活動を義務付けることについては賛否両論があるようです。履修時間数や、ボランティア活動が授業時間内に行われることなどを考えると、ボランティア活動が生活に根差しているように感じられるカナダとは、ボランティアの概念に対する理解度にかなり差があるようです。

 「全国ボランティア週間」の期間中に、2人のパートナーと共同運営している非営利法人「日本語認知症サポート協会」の活動のひとつである講演イベント開催に、ボランティアとして協力してくださっている方数名とお食事をする機会がありました。設立して一年足らずの団体にとって、ボランティアの方々の協力なしには、その活動は続きません。また、 ボランティアによる人的資源と同じく、運営資金がないことには、基本的な協会の運営は成り立ちません。活動資金の調達のために、定期的な活動以外にもイベントを行い、金品またはサービスによる寄付を募り、次の活動に繋いでいきます。非営利団体を立ち上げたことのある人であれば、資金ゼロからの運営の難しさや、資金調達の大変さは容易に理解できるところですが、その実情を知らない外部の人は、協会のメンバー自身も、仕事も持ちながら、すべてボランティアで活動していることなど知る由もありません。実際、協会のメンバーが報酬を受け取って活動していると誤解している人がいるらしいことも、小耳に挟んでいます。

 「日本語認知症サポート協会」は、認知症の正しい知識の啓発により、偏見や誤解をなくすことを目指す草の根的な活動から出発しています。活動範囲を広げていく過程で、いろいろな人的・物的な支援を得ながら、コミュニティーの繋がりを築き、息の長い活動を続けていくこと。そこに、ボランティアによる協力がなければ、活動は立ち行かなくなります。地域のコミュニティーになくてはならない団体にしていくためにも、頼りになるボランティアの方々は、協会の大切な財産です。

 


ガーリック康子 プロフィール

本職はフリーランスの翻訳/通訳者。校正者、ライター、日英チューターとしても活動。通訳は、主に医療および司法通訳。昨年より、認知症の正しい知識の普及・啓発活動を始める。認知症サポーター認定(日本) BC州アルツハイマー協会 サポートグループ・ファシリテーター認定

 

 

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