2019年1月10日 第2号

セクハラ1

 今の私の人生には、大事な目的がある。それはこんな記事を書いて、少しでもみんなが自分を愛し、幸せを感じられるようになるためのお手伝いをすること。そのために、今回は私たち日本人、特に女性としての価値観がどうやってできあがっていき、そして、それはどんな社会的な背景が理由でできあがっていくのかを、私の経験を紹介しながら話してみたい。そのためにはあえて、ちょっとダークなトピックも触らせてもらう。

 2018年、ここ北米では多くの女性たちが、セクシャルハラスメント、女性に対する抑圧被害を告発。多くの女性たちが自己の権利を主張し、人間として幸せと尊厳を勝ち取るために立ち上がって運動をしている。日本でもそうだけど、近頃では例えば、ゲイとか、身体障害者とか、トランスジェンダー…いわゆる社会的にはマイノリティーの人たちが、どんどん社会に堂々と出てこれる世の中になってきた。これはすごくいいことだよね。米国ではトランプ政権が発足して以来、特に人種問題、セクシャルハラスメントに関しては、今まで社会が触れないようにしてきた、タブー、人間の醜い部分が表面化して、すごく問題になっているよね。この記事を書いている途中の2018年4月、とてもこのトピックにタイムリーな出来事が起きた。日本の相撲協会が、土俵上で倒れた市長の緊急処置をしていた看護師の女性を退場させようと場内アナウンスをしたこと。カナダにいる私のところにさえ、“こんなひどい女性差別が、日本では今だに起こっている”という報道が即座に入ってきた。そしてその後、ダメ押しのようなTOKIOの山口達也氏の女子高生に対するセクハラ事件…こんなニュースを海外から見ていると、私が日本に住んでいた頃の経験を思い出す。

 小学校、中学校と露出狂、痴漢などに何回もあって本当に怖い経験をたくさんした。中でもよく覚えているのが、私が大学生の時。飲食店でアルバイトをしていた頃、50代半ばくらいの店長さんに毎日、胸やおしりを触られてすごく嫌だった。しかも大学生バイトのみんなが、誰一人として店長に抗議できる子がいなかった。全員10代の若い女の子ばかり。私たちはひたすら我慢した。それから私が社会人になった後、派遣で仕事をしていた時のこと。送迎、忘年会などがあると、会社の人達と飲みに行く機会があった。そんな時、決まっていつもは超真面目なサラリーマンのおじさん達が、お酒が入るとすぐに人が変わり、セクハラおやじに変貌する。いやらしい事を言われ、触られたりした。しかも、さらにそのおやじたちの超気持ち悪いところは、次の日会社に出ると、全員真面目な顔をして、何事もなかったように業務をこなす。この時も前回と同様、私たち女子社員は誰も抗議するための“声”を持っていなかった。こんなことははっきり言って、私が見てきた日本での女性に対する軽蔑、差別に関する経験の100分の1くらいかな。日本で生まれ、育つ、女性の誰しもが多かれ少なかれこんな経験をしてると思うし、そうやって日本人女性の価値観と性に関するネガティブな認識は、個人的な社会的なレベルでできあがっていると思う。

 法律的には、今の日本は女性を尊敬する事を建前にしているけど、実際のところ、意識的な部分ではまだまだ。もし日本の社会が女性を本当に尊敬しているのであれば、これだけの数の風俗ビジネスが堂々と表立って日本に存在できるはずがない。でも、女性にだって多少の非はある…男性に経済的に頼ったり、自分の性を使って男性を利用したり、責任逃れをする女性がいる。私は九州出身の保守的な両親に、大事に育てられた。父は仕事人、母は家を守るといった感じ。そして大学に行くという、教育の自由をもらった。ありがたいことだ。でも、じゃあ大学で学んだことを使って、自分はどう社会に貢献するのかなんて考えたことはなかった。両親を見ていて、結婚して、子供を産み、幸せになるのが自分の幸せだと認識したし、自分が無限の可能性を持っていることを想像したこともなかった。あの頃の私の口癖は、「大学卒業後の22歳で結婚、すぐに子供を産みたい」。社会的に貢献することを求められずに、母になる生き方だけを自分のレールだと思って育った私。“みにくいアヒル”ではないけれど、アヒルの家族の中で、白鳥の子供が、みんなみたいになりたいと願うのは当然。でも、白鳥の子はどうやってもやっぱり白鳥なんだよね。私は、母になること以外にもやることがあってこの世に生まれてきたことにずっと気づかずにいた。

 そんな私が、カナダで超ポジティブな主人(以降“ダダさん”いつも言っている愛称で呼ばせてもらうね)に、ひたすら愛情を注がれて、だんだんと“本当に自分はこのままでいいのか?”っていう、心のささやき声が私には聞こえ始めた。最初はちょっとした違和感。でもそれが徐々にクリアな声に変わってきて、"自分には素晴らしい能力があるから、世の中に役に立てるべきだ"って。ずっと私は、このささやき声を無視していた。だって自分は、いい妻、お母さんであるべきと信じ切っていたから。でもそのうち今度は、そのささやき声は、映像になって、私の頭の中に出てくるようになった。今もそのビジョンは、私にははっきり見えているんだよ。そのビジョンの中の私は、何百人もの人の前で、何やら話をしている。このビジョンは、時間が経つにつれて、どんどん鮮明になって、しかも頻繁にでてくるようになった。今ではもうこれを無視することはできない。だから、私はこんな記事を書くことにしたんだけどね。この私の心の声に、やっと気づいたとき、私はもう40歳を過ぎていた。そして、本当の自分を見つけた時に、晴れ晴れしたというか、肩の荷がすっと下りた感じを覚えた。まるで、ゲイの人が、カミングアウトするみたいだと思った。世間的に自分のあるべき立場に縛られて、ずっと違和感を感じながら、でもどうすることもできないまま、長い時間がたつ…私は、ずっと保守的な日本人女性としてあるべき姿になるように、ずっと努力し続けた。日本人女性の無意識な抑圧感情とは何!? 例えば、細身で、色白、か弱い、かわいい女であるべき、結婚すべき、子供を産むべき、男を立てるべき、自己主張をするのは醜い、女は年を取ったらもう終わりだ…など。

(次号に続く)

 


作者プロフィール ドナルド涼子

BCRPA Supervisor of Group fitness & Yoga ,Personal trainer, Older Adult, 200H Yoga Teacher

47歳、愛知県出身、1999年に結婚を機にカナダに移住、34歳の時にフィットネスインストラクターの道に進むとすぐ、女性に人気のカリスマインストラクターへ成長する。2016年ベストインストラクター賞を受賞。43歳の時に、アマチュアボディービルのビキニコンペティションを趣味として始め、地区、州大会にて優勝、上位入賞経験あり、現在次の全国大会に向けてトレーニング中。また、フィットネスプロフェッショナルへの講習活動、地域の学校でのヨガ、フィットネス指導、老略男女問わず、心と体の健康と幸せの為の活動を行っています。また、近年マスメディアにも出演、読売テレビ、グッと地球便、Nikkei TV Chipapa など。こんな肩書を持つ私ですが、若かった頃は、性格ブス、デブ、ネガティブ、ずっと自分の事が大嫌いだった。そんな私には、運命を変えてくれる主人との出会いがカナダで待っていた。出会った瞬間にビビット来て、この人と結婚するってわかった私は、出会って1週間後に彼の実家に転がり込んだ?!そして、結婚、異国の地で2児の母になる。気が付けば20年、今の私は心から幸せ、自分大好き。私がどうやって幸せをつかんだのか、私の経験をお話ししながら皆さんに伝えたいと思います。私の目的はただ一つ、あなたにも“幸せ“になってもらう事。 パーソナル、グループトレーニングやヨガのご質問は、This email address is being protected from spambots. You need JavaScript enabled to view it. 604-889-4729 まで、または Instagram : befitfirmfab 、 facebook : Ryoko Donald

 

 

 

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