2018年8月30日 第35号

遠隔介護とは関係ないのでは?と思われるかもしれませんが、突然、高齢の親から「家を出た」「離婚する」と連絡が来るのはなきにしもあらず、という時代なのです。統計では、70歳以上での離婚は、2000年には1,436件、2014年には3,435件と、2倍以上に増えているそうです(人口動態統計)。親の離婚は子どもにも少なからず影響を及ぼします。

平均余命が長くなったのが原因?

 シニア離婚が増えているのは、寿命の伸びと関係があります。

 平均寿命とは別に、「平均余命」というのも、厚生労働省が5年に一度発表しています。平均余命は、死亡率などのデータから、その年齢の人が、平均であと何年生きるかを計算したもので、平均寿命は今年生まれた人の平均余命になります。

 2015年の平均寿命は、男性が「80.75年」、女性が「86.99年」です。では、70歳での平均余命はというと、男性は15.59年、女性は19.85年とあります。つまり、今70歳の男性は86歳まで、女性は90歳まで生きるのです。

あと何十年耐えるより、離婚して余生を楽しく

 男性の寿命がここまで長くなかった頃は、夫を看取ってから、妻がその後の人生を楽しむ、というケースが多くみられました。しかし、夫が85歳以上まで生きるかも知れない、ということになると話は別。こんな生活があと何十年続くなんて耐えられない、と考える人もいるのです。女性からの離婚理由は、夫が家事をしない、言葉の暴力、夫の金遣い、夫(の親)の介護、などが多いようです。

 男性のほうにも変化があります。昔は、「妻から離婚を言い渡され、生活力のない夫が途方に暮れる」というパターンが多かったのですが、最近は、夫から離婚を切り出すケースも少なくないそうです。コンビニに行けばお弁当があり、家事代行サービスもあり、ちょっとした家事なら自分でもできる人もいます。男性からの離婚理由は、妻の文句や不満、妻が趣味などを否定する、自分の親の介護をしてくれない、妻との会話がない、などです。

シニア離婚の問題 ①お金

 離婚が増えたのには、2007年に始まった年金分割制度により、離婚後の妻にも年金が支給されるようになったという背景があります。しかし、この年金は「厚生年金」のみで、夫が自営業の場合は、分ける年金はありません。貯蓄なども離婚時折半になりますが、借金も折半なので、家のローンが残っていたりすると、差し引かれます。また離婚というと慰謝料ですが、シニア離婚で慰謝料をもらっているケースはごく少ないそうです。このため、自分一人で生活できると思って離婚したけれど、ふたを開けてみると、生活が成り立たず、子どもに援助してもらっている人もいるようです。

シニア離婚の問題 ②孤独

 お金がきつくなると、友人とのランチや旅行も、今までなら何とも思わず出せていた金額が高く感じられるようになります。でも、「もうちょっと安いところに…」とは恥ずかしくて言えません。それで、自然にそういうお付き合いから遠ざかってしまうのです。せっかく配偶者からは自由になっても、人生を楽しめないと、閉じこもり気味になったり、食生活が乱れて病気になったりしてしまいます。離婚の理由が「別に好きな人ができた」でなくても、離婚後の孤独から、交際や再婚を考える人もいるようです(この話は次回に)。

私たちにできること

 離婚に至る前に、何かできることはなかったのでしょうか。上記の離婚原因を見ると、「家事をやらない夫に妻が腹を立て、夫は妻の文句が嫌」、というのがあります。もし、「家事代行サービス」を頼んでいたら、妻の家事の負担は減らせ、その結果、夫への文句も減らせたのではないでしょうか。

 ステレオタイプかも知れませんが、男性は趣味などに時間やお金をかけることが、女性より抵抗がありません。女性は、友人とのランチや温泉旅行にはお金を出せても、お手伝いさんを雇うのは、「もったいない、自分でやる」と考えるのではないでしょうか。しかし、まさにここが離婚を回避できるカギだと思うのです。70歳、80歳になっても自分は家事をし、夫は楽しんでいる、となると、イライラや怒りがたまるのは当然です。

 私たちにできるのは、「お母さんへのサポート」です。家に他人を入れることに抵抗がある方なら、「配食サービス」を頼んだり、お掃除ロボットを買ってあげる、などもできます。「ここまでがんばったんだから、ちょっとは楽しんでいいよ」と言ってあげるのも親孝行ですよ。

 


角谷 紀誉子

著者略歴:ワシントン州認定ソーシャルワーカー。サクセス・アブロード・カウンセリング代表。留学生・駐在員・国際結婚家族などを対象に心理カウンセリングを提供してきた。著書に「在米心理カウンセラーが教える、留学サクセスマニュアル」(アルク社)、「親が読む、留学サクセスマニュアル」など。2017年、日本の介護システムをわかりやすく解説し、ケーススタディを用いて日本の親に何ができるかを具体的に紹介した、「遠隔介護ハンドブック」を出版。アマゾンUSAにて発売中。秋にバンクーバー「日本語認知症サポート協会」でセミナー予定。www.successabroadcounseling.com メールはThis email address is being protected from spambots. You need JavaScript enabled to view it.

 

 

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