2019年4月18日 第16号

 オンタリオ州トロント中心部、オンタリオ湖岸を走る高速道路の高架橋の下に、期間限定の超高級レストランが出現した。皮肉なことに、その場所から少し離れた同じ高架下では先月、ホームレスたちのテント村が強制撤去されていた。

 場所は通称『ベントウェイ』と呼ばれ公共施設整備計画が進んでいる、ガーディナー・エクスプレスウェイの高架下。ここに出現したレストラン『ディナー・ウィズ・ア・ビュー』は、屋外に置かれたテーブルを個別に覆う、ガラス製の暖房完備のドームの中で食事をとるという、斬新なスタイル。3コースのディナーは、TVの人気料理バトル番組『トップ・シェフ・カナダ』で優勝経験を持つレネー・ロドリゲスさんによるもの。なおその価格は550ドルからとなっている。

 その一方で、同じ高架下でホームレスらが暖房もない暮らしを続けてきていたテント村は、トロント市によって3月13日に撤去され、多くのホームレスが行き場を失った。

 この状況に対し、貧困問題に取り組む団体、オンタリオ州貧困と闘う連合(Ontario Coalition Against Poverty ー OCAP)が5日、抗議行動を行った。『金持ちを見るディナー(Dinner With A View Of The Rich)』と名付けられた抗議活動に集まったメンバーらは、ドラムやスピーカーなどでできる限りの大きな音を出し、超高級レストランを訪れていた客のディナーを妨害しようとしていた。抗議を企画したOCAPのヨギ・アチャリヤさんは取材に対し、自分たちの抗議はトロント市とジョン・トーリー市長、そして彼の取り巻きに向けたものだと明言している。OCAPは、ホームレスが高架下のテントで寝る必要がなくなるよう、市が十分なシェルターを用意することと、収入に応じた賃貸料で借りられるアパート建設を求めている。

 『ディナー・ウィズ・ア・ビュー』は5月末までの期間限定のプロジェクト。同レストランはOCAPの抗議に対し、自分たちもテント村を追い出されたホームレスたちに同情をしていると述べている。その上で、レストランがつくられた場所はテント村から2キロメートル近くも離れており、レストランの土地確保のためにテント村が撤去されたような事実はないと指摘している。さらにこの場所を選んだのは、テント村撤去が行われる1カ月以上も前のことだったとも、取材に説明している。また、土地とレストランはそれぞれ別のオーガナイザーによって企画・運営されており、またトロント市のエージェントでもないと話している。そしてこのレストランのような企画が、ベントウェイの施設整備プロジェクトの資金集めにつながっていると説明、そのおかげでこの場所で年間を通じて低予算のイベントが実現できていると語っている。

 レストランは抗議当日には警察に出動を要請、ガラスドーム群の周りには、ディナー客らから抗議活動が見えないよう周囲に目隠し用のフェンスを設置していた。

 

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