2019年1月1日 第1号

 頭蓋骨内側に異常な量の水(脳脊髄液)がたまる、水頭症を患っていたケベック州の2歳児の手術が、無事成功した。

 家族の希望により2歳児の名前は明らかにされていないが、北米内で生まれ2017年ケベック州に移り住んできた。同州モントリオール市サン・ジュスティーン病院で診断を受けた時には、頭部に約3リットルの脳脊髄液がたまっていた。これは通常の大人の20倍の量になるという。この液のため脳は圧縮され正常な発育ができず、同年代の子供の脳の2割程度の大きさしかなかった。一方その圧力により頭蓋骨は異常に膨張、頭のサイズはバスケットボールほどの大きさである、頭囲71センチとなっていた。

 北米では通常、より早い段階で治療が始められるため、これほど進行した例はあまりないという。同病院の小児神経外科医アレクサンダー・ベイルさんは、この先少女が少しでも正常な成長に近づけるよう『思い切った手術』を行うことにした。整形外科医のダニエル・ボルサクさんや米ミシガン州の研究所とチームを組み、たまった脳脊髄液を排出するとともに、大きくなりすぎた頭蓋骨を小さなピースに切り分け、その中のいくつかを再び組み合わせ、適切な大きさの頭蓋骨─手術前の約4割の大きさ─を作り上げるというものだ。

 実際の手術前には、3Dプリンターによるモックアップが作成され、どのように頭蓋骨を再構築するかの手順が確認された。ベイルさんによると、きれいな形にまで再生することは不可能だが、できるだけ普通に近い生活を送れるようにすることが最大の目的だと、取材に語っていた。

 手術は2018年11月5日午前11時5分から開始された。慎重に頭皮がはがされたのち、3Dプリンターで作成された、ヘルメット状の頭蓋骨切り分けガイドを頭蓋骨にあてがい、切り分け線がマジックで引かれていった。

 数時間後に、ようやく頭蓋骨上半分が取り去られ、次の処置─脳内にたまった液を排出する作業─が始まった。急激な排出は内部の圧力に急激な変化を及ぼし、不必要なリスクを増すことから、1時間あたり500ccのペースで排出が続けられた。

 そして切り分けた頭蓋骨を組み合わせ、新しい頭蓋骨が構築された。そのためには、約1年で溶解する210本のネジが用いられた。手術が完了したのは、12時間後だった。

 2週間後にMRIで検査が行われたが、すでに脳の大きさは2倍になっていたという。今後、この子の神経ネットワークが次第に再構築されていき、最終的に同年代の子供と同じように遊べるようになることを、手術チームは願っている。

 

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