2018年8月23日 第34号

 ブリティッシュ・コロンビア州のヘリコプターが、地球周航最速記録を樹立した。地球周航とは、ある地点と、地球上のその裏側にあたる地点(対蹠地)の両方を通過する経路で、地球を一周すること。その間に赤道を少なくとも2回、横切ることになる。

 対蹠地関係にある2地点を通過したことが確認できるよう、どちらも陸地である組み合わせを選ぼうとすると、中国や東南アジアの一部と、その『地球の裏側』にあたる南米のある地域の組み合わせのほか、選択肢はそれほど多くない。

 この制約の多い地球一周に挑戦したのは、同州のリゾート地ウィスラーに住むヘリコプターパイロット、ルーベン・ディアスさんと、副操縦士を務めたヘリコプター飛行教官のミシャ・ゲルプさん。この挑戦を『エピック・ワールド・ツアー』と名付けた彼らが、ウィスラーのヘリポートから飛び立ったのは5月1日のことだった。

 97日間のツアーでは、様々な困難に直面した。アラブ首長国連邦からパキスタンに向かう際には、発行されるはずだった入国許可証が予定日までに発行されず、待機していた同連邦の首都ドバイのホテルで、ツアー中止を覚悟したこともあった。別ルートを取った場合、彼らがすでに通過した最初のチェックポイント(南米コロンビア)の対蹠地となる、インドネシア内の二つ目のチェックポイントを通過するまでに時間がかかり過ぎ、世界記録の122日を破ることは不可能だったからだ。彼らは挑戦をあきらめ、トルコ、ロシア経由で引き返すつもりでいた。

 そんな絶体絶命な状況を、ホテルの従業員にも打ち明けていたディアスさん。実はこの時、同ホテルにはパキスタン政府の高官が滞在しており、この従業員がこのことを持ち掛けていた。そして、この高官が電話を一本かけることを約束した翌日、入国許可がおりた。

 しかしこれは、97日間、飛行距離6万キロメートルを超えるツアーの中で起こった、様々な困難の一つに過ぎなかった。そんな挑戦を成功に導いたのは、ツアーをスムーズに継続できるよう、たゆまない支援を行ってきたサポートチームのおかげだと、ディアスさんは語っている。

 そして今月5日、再び出発点のウィスラーヘリポートに戻ってきたディアスさんとゲルプさん。ツアーを無事終了できたことは、とても意味深いと取材に語るディアスさん。地球上のありとあらゆる環境を飛んできて、得られたものは何だったかという質問に対しては、42カ国の空を飛んできて確信をもって言えることは、この地球上で一番美しい場所はBC州で、特にウィスラーは格別だと、2人は口をそろえて答えていた。

 

 

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