2018年7月26日 第30号

 オンタリオ州ブランプトン市の女性が、同地で客死した母親の遺体を祖国に空輸する際の航空会社の手際の悪さに怒りを募らせている。

 カリブ海に浮かぶ小国セントビンセント・グレナディーンから、ブランプトン市に住む娘のディオン・デ=フレイタスさんのもとを訪れていたのは、パトリシア・サミュエルさん(63歳)。デ=フレイタスさんに最近生まれた子供の顔を見ることも、サミュエルさんの目的の一つだった。

 そんなサミュエルさんが就寝中に息を引き取ったのは6日のことだった。祖国に埋葬することを望んだデ=フレイタスさんは16日朝、サミュエルさんの棺をトロント空港から、米マイアミ行きのエアカナダ機に乗せた。そして17日朝にはアメリカの貨物航空会社アメリジェット直行便で、セントビンセント・グレナディーンに空輸されるはずだった。

 しかしマイアミ空港での接続に20時間もあったにもかかわらず、エアカナダは棺をアメリジェット側に引き渡せなかった。デ=フレイタスさんがアメリジェット側に問い合わせたところ、エアカナダが棺を持ち込んだのは17日午後3時52分、セントビンセント行きの飛行機はすでに目的地に到着している時刻だった。結局、棺はそのまま、マイアミ空港の冷蔵設備のない倉庫内に置かれていたという。

 一方エアカナダ側は、アメリジェットでの空輸に間に合わなくなった時点で、チャーター機による輸送を手配したと、メディアの取材に説明している。さらにチャーター代も航空会社側で負担することにしていたという。しかしデ=フレイタスさんからは、次のアメリジェットの直行便に乗せるよう指示があったため、それを尊重し倉庫で適切に保管することにしたと話している。ちなみに、アメリジェットの直行便は週1便なので、次の直行便ということは一週間後を意味している。

 ところが、デ=フレイタスさんによるとエアカナダの対応は全く違っており、19日になってようやくニューヨーク経由でのセントビンセント行きの手配がなされた。20日にニューヨークに到着した棺は、21日朝にようやくサミュエルさんの故郷に向かって飛び立った。

 しかし現地でのサミュエルさんの葬式は当初21日に予定されていたため、結局この空輸スケジュールでは間に合わず、葬式を1週間延ばさざるを得なかったと語るデ=フレイタスさん。「これは一般手荷物とは全く次元が違うもの。もしこの遺体がエアカナダの従業員の母親だったら、こんな扱いを受けていただろうか」と、航空会社の対応に怒り心頭だ。

 

 

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