2018年5月31日 第22号

 カナダ政府ビル・モルノー財務相は、キンダーモーガン社のトランスマウンテン・パイプラインとそれに伴うインフラ整備を合わせて45億ドルで買収する考えを29日に示した。

 しかし今後、国の負担がさらにどれくらい増えるのかについての詳しい数字には言及しなかった。

 これで国営企業の管轄の下、トランスマウンテン・パイプライン事業が進められることになる。ただ、モルノー財相は、今回の措置は一時的なもので、国が永久的に保有するわけではなく最終的には売却するとしている。すでに売却先も模索中という。

 キンダーモーガン社は4月、ブリティッシュ・コロンビア州政府や先住民族などの激しい反対活動のため事業が進まず費用がかさむことを理由に、もしカナダ側の状況が変わらなければ、パイプライン拡張工事計画そのものを撤退する可能性も含め判断するとし、その答えを出すまでの期限を5月31日と発表していた。

 カナダ政府はその期限の2日前に今回の買収を発表。その間もキンダーモーガン社とは話し合いが進められており、この日の記者会見では合意内容についても語った。

 買収が完了するのは8月。それまでは拡張工事はキンダーモーガン社が引き続き管轄する。

 今回の連邦政府の判断に対しては賛否両論あるが、共通した意見としては、今回の措置が根本的に問題を解決するには至っていないということ。反対しているBC州政府や先住民族にとっては、相手がアメリカの民間企業からカナダ政府に代わっただけで、根本的には何も変わらない。さらに、2016年に連邦政府が、この拡張工事を承認するにあたりキンダーモーガン社に課した条件のうち、いまだにクリアされていない条件も引き続き残ったまま。拡張工事についてはまだまだ不確定な部分が多く残っている。

 

 

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