2018年5月10日 第19号

 認知症患者向けのユニークな施設が、ブリティッシュ・コロンビア州ローワーメインランドの、人口2万6千人ほどの町ラングレーに建設される予定だ。

 ザ・ビレッジと名づけられたこの施設は、ケア施設のカテゴリーとしては、介護なしの自立型住居となる。2・8ヘクタールの敷地内に、6棟の低層住宅が建てられるが、一般的な老人ホームや介護付住居と大きく違うところは、ひとつの棟には12部屋しかなく、全体でも78人しか入居できない点。そして、それとほぼ同数の訓練を受けたスタッフが入居者のサポートを行う。

 さらに敷地内には散歩道や花壇などが完備され、入居者は自由に散歩したり外気に触れたりすることができる。もちろん勝手に外部には出られないようになっているが、入居者がビルの中に閉じ込められて閉塞感を味わうようなことはないと、このプロジェクトのリーダー、エルロイ・ジャプセンさんは取材に説明している。施設には時間指定のスケジュールなどはなく、入居者は好きな時間に起きて、いつでも朝食を取ることができ、好きなアクティビティに参加したり、庭仕事にいそしんだりできるという。

 また敷地内に建てられるコミュニティセンターでは、売店や一般の参加も可能なプログラムが提供される。ジャプセンさん曰く、閉ざされた施設ではなく、コミュニティの中の小さな村のようなものでありたいと語っている。

 またBC州アルツハイマー協会のチーフエグゼクティブ、マリア・ハワードさんも、このようなタイプの施設のニーズは非常に高いと、取材に話している。

 2016年の時点で、およそ56万4千人のカナダ人が認知症を患っていると推定されているが、同協会によると、その数は2031年には94万人にまで増加すると予測する。多くの人は自宅に引き続き暮らすことを望むとみられているが、これは認知症という病気や、その治療といったことだけで解決できるような問題ではなく、交通手段、人材、教育、そして住宅といった様々な問題と取り組まなければならず、コミュニティのなかで彼らが暮し続けるためのサポート体制は全く追いついていないと、ハワードさんは指摘している。

 ザ・ビレッジは民間企業が開発・運営する。1カ月の入居料は6千ドルから7500ドルの間になる予定だが、これは政府の援助を受けていない施設としては平均的なものだという。

 

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