2018年4月19日 第16号

 ジャスティン・トルドー首相は15日、首都オタワでブリティッシュ・コロンビア(BC)州ジョン・ホーガン州首相とアルバータ州レイチェル・ノッテリー州首相との3者会談を行った。トランスマウンテン・パイプライン拡張工事を巡る対立が表面化して以降、連邦、BC、アルバータ政府が一堂に会するのは今回が初めて。

 拡張工事を承認した連邦自由党政権とパイプライン推進派のアルバータ州政府は、BC州政府が環境対策強化の検討を発表して以降、BC州政府のパイプライン阻止対策と捉え、パイプラインは「必ず建設される」と繰り返してきた。

 アルバータ州はこれまでBC州のワイン購入を禁止したり、連邦自由党政権にBC州への圧力を強めるよう要請したりと、BC州への攻撃を強めている。

 一方、BC州政府は、こうした連邦自由党政権、アルバータ州政府の圧力にも屈することなく、環境問題、特に海洋への影響の懸念を理由に一歩も引く姿勢を見せていない。環境対策強化の提案は取り下げたものの、現在はBC州政府の支配権について裁判所に訴えている。

 こうして打開の方法が全く見つからないまま、遂にトランスマウンテン・パイプライン拡張計画を手掛けるキンダーモーガン社が8日、事態が打開しなければ事業からの撤退も辞さないとの通告を示した。期限は今年5月31日。事業継続の条件として、BC州での工事が遮られることがないことを保証することとしている。

 それ以降も、パイプライン推進派の連邦自由党政権とアルバータ州はBC州への説得手段を欠いたまま「パイプラインは完成する」を繰り返した。

 野党の批判はトルドー首相に集中した。パイプライン推進派の保守党はトルドー首相のリーダーシップの欠如が事態を悪化させていると批判。基本的にパイプライン反対派の新民主党(NDP)は、BC、アルバータ両NDP政権が州民のために対立しているのはトルドー首相の決定力のなさが原因と非難した。

 こうした中、13、14日にペルーのリマで開催される米州首脳会議に出席するためにカナダを離れるトルドー首相が出発直前の12日、オタワで3者会談を開くことを発表。首相は当初、ペルーからフランスのパリに渡り、イギリスのロンドンでイギリス連邦首脳会議に出席する10日間の外遊が予定されていたが、15日、ペルーからフランスに移動する途中にオタワに立ち寄ることになった。国内を二分するような問題を解決できないまま10日間も国を空けることに批判の声も上がっていた。

 そして15日の会談後、3者と野党保守党アンドリュー・シェア党首が記者会見。最初に会見を開いたホーガンBC州首相は、今回の3者会談で「お互いにこの件について意見が違うことを改めて確認した」と語った。BC州は今後も州民の利益のために必要なことを行っていくと改めて承認を拒否した。

 アルバータ州ノッテリー州首相は、パイプラインが建設されるために必要な全ての手段を講じていくと語り「パイプラインは必ず完成する」と繰り返した。

 トルドー首相は、現在のような複雑な状況になった原因をBC州政府の非協力のせいとBC州政府を批判。キンダーモーガン社への経済的な支援も含め、あらゆる手段を取ると語った。ただ会談前に挙がっていたBC州への支援の停止などについては否定した。今回の会議は事態を打開するためのものであり、BC州を罰するためのものではないと強調した。

 結局、この会談で何一つ解決しなかったことが明らかになった。

 

 

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