2017年7月6日 第27号

 アフガニスタンで戦闘に参加し、アメリカ人兵士を殺害したとして、キューバにあるアメリカ軍グアンタナモベイ収容所で服役したカナダ人オマー・カダーさん(30)に、カナダ政府は謝罪し、1050万ドルの補償金を支払うことが7月4日、分かった。

 カナダ生まれのカダーさんは少年時代に、アフガニスタン人でアルカイダ組織の一員だった父に連れられアフガニスタンで爆弾作り要員にされ、アメリカとの戦闘に参加。15歳だった2002年に、アメリカ兵との銃撃戦のあとアメリカ軍に捕らえられ、手りゅう弾でアメリカ兵士1人を殺害、1人を負傷させたとして、テロリストを収容するグアンタナモベイ収容所に最年少で収容された。2010年にはアメリカ人兵士殺害を認め、戦争犯罪者として起訴された。2012年カナダに引き渡され、2015年に出所。現在はアルバータ州エドモントンで生活している。

 カナダ最高裁は2010年に、当時子供だった容疑者のカダーさんに対するカナダ政府の対応は人権侵害に当たるとの判断を下した。カナダ政府は諜報機関職員をグアンタナモベイ収容所に派遣し、拷問に近い尋問によって得た情報をアメリカ政府と共有したとしている。カダーさんの弁護団は、人権侵害に対してカナダ政府に2千万ドルを請求。今回の和解内容となった。

 しかし、この政府の対応に意見は二分している。擁護派は、カダーさんは少年兵として扱われるべきだったとし、10年間アメリカの収容所で虐待を受け、当時の保守党政府に助けを求めた時に拒否されたため、罪を認めるしかなかったと政府の責任を強調している。一方で保守党からは、テロリストに税金から多額の補償金を支払うのは不適切との声が上がっている。

 カナダ政府が、外国で不当な虐待を受けたカナダ人に対して補償金を支払うのは今回が初めてではない。

 

 

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