2017年6月22日 第25号

 今まで寒冷だったカナダ沿岸に、暖かい海で育つ海洋生物が進出し始めている。またこれに伴う、本来の生態系への影響を懸念する声も上がっている。

 ブリティッシュ・コロンビア州沖で最近、漁師がよく目にするようになった生物にヒカリボヤ(Pyrosome)がある。もともとは熱帯の海に棲む、半透明でぶつぶつした表面の円筒形で中空の生物。インターネット上にはダイバーが撮った写真が多数掲載されている。中には体長が10メートルを超えるものもあるが、BC州沿岸まで北上してくるのは、せいぜい8センチメートル程度から60センチメートルだという。

 またヒカリボヤという名前のとおり、これに寄生しているバクテリアが発光し、全体が青白く光って見える。

 BC州ビクトリア大学の海洋ネットワークカナダ(Ocean Networks Canada)のグループは先週、まるで降りしきる雪のようなヒカリボヤの大群が、海中に漂っている様子を動画に撮影している。

 また米国オレゴン州の研究グループは漁網を使って調査を行ったところ、約5分間で推計6万体のヒカリボヤが採取されたと報告している。アメリカ・ワシントン州でオヒョウ漁を営む漁師も、4月に漁が解禁になって以来、バンクーバー島南西部のファン・デ・フカ海峡では、漁の仕掛けの針にヒカリボヤが相次いでかかっていると、取材に話している。

 また漁師仲間が釣ったギンダラからヒカリボヤが見つかったこともあり、海中の浅いところだけではなく、ギンダラがエサを捕食する海底にまでヒカリボヤが分布しているとみられる。

 ヒカリボヤも動物性プランクトンを食料とするため、エビやカニの甲殻類、またイカなどの軟体動物とエサを奪い合うことになる。甲殻類は高タンパク質のエサとなり、サケなど大型魚類、最終的にはザトウクジラまでの食物連鎖を支えているが、これが低栄養価のヒカリボヤなどに置き換えられてしまった場合、生態系に影響が出る可能性もある。

 同州バンクーバー島のシドニーにある海洋科学研究所の動物プランクトン分類学者モイラ・ガルブレイスさんは、現在BC州沿岸で見られるヒカリボヤは、東太平洋で2014年から2016年の間に発生した異常に暖かい海流に乗ってここまで流れてきたものだと推測し、海流が変われば数は減少するかもしれないと予測する。その一方で、もしヒカリボヤが本来のBC州沿岸の海水温でも繁殖するように適応してしまった場合は、その限りではないと話している。

 

 

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